計画研究
カリウムイオンチャネルは、神経細胞、筋細胞等の興奮性細胞だけでなく、非興奮性細胞にも広く分布し、筋収縮、神経伝達物質の遊離、ホルモン分泌、及び細胞増殖などの多様な生理機能において重要な役割を果たしている。海洋ポリエーテル天然物ガンビエロールは、マウスに対して強力な致死毒性を示し、電位依存性カリウムイオン(Kv)チャネルサブタイプKv1及びKv3に対して選択的かつ強力な阻害活性を示す。本研究では、ガンビエロールのKvチャネルに対する阻害活性発現に必要な最小構造単位をもつ活性単純化類縁体を開発し、詳細な機能解析を行うことを目的とし、イオンチャネルサブタイプ選択的阻害剤の合理的設計のための分子基盤の構築を目指した。これまでに、ガンビエロール及びガンビエロールの毒性発現に重要な右側構造を保持した構造単純化類縁体(4環性及び7環性類縁体)に対して、マウス小脳顆粒細胞を用いた電気生理実験を行い、2種の構造類縁体ともに天然物と同等のKvチャネル阻害活性を示すことを明らかにした。今年度は、KvチャネルサブタイプKv1.2を恒常発現させたHEK293T細胞系を構築し、ガンビエロール及び2種の構造単純化類縁体のチャネルサブタイプに対する阻害活性評価を実施した。4環性及び7環性類縁体はいずれも、ガンビエロールと同等のKvチャネル電流阻害活性を示すことを明らかにした。また、ガンビエロール類縁体合成の過程において、中員環ラクトンより容易に合成できる混合チオアセタール及び対応するスルホンの官能基化による新たな中員環エーテル構築法を見出し、その一般性について検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
海洋天然物ガンビエロールの構造活性相関を基盤として設計・合成した構造単純化類縁体が、電位依存性カリウムイオン(Kv)チャネルサブタイプKv1.2に対して、天然物ガンビエロールと同等のイオンチャネル阻害活性を示すことを初めて明らかにした。これにより、当初の目的の一つである、天然物よりも容易に合成可能で、かつ高活性な構造単純化類縁体の獲得に成功した。
これまでの評価系であるKv1.2を発現させたHEK293細胞には内在性のKvチャネルが含まれていることから、チャネルサブタイプに対する阻害活性の精密評価の点で課題を残した。今後は、内在性Kvチャネルを含まないCHO細胞を用いた発現細胞系の構築を行い、ガンビエロール及び構造単純化類縁体の阻害活性評価を行う。また、ガンビエロールの3環性構造単純化類縁体の合成と阻害活性評価を行うことにより最小活性構造単位を探索するとともに、阻害活性を示す単純化類縁体の構造を基盤としてKvチャネルにおける結合部位探索のための光親和性標識化分子プローブの設計・合成へと展開する。
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