計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
[循環シミュレーション]太陽系惑星とは諸条件の異なる系外惑星へ適用するための大気循環数値シミュレーションの基幹部となる力学計算コードの新開発に着手した。その開発版を用いて小質量星周りのハビタブルゾーンに多数存在することが期待される同期回転惑星を題材とした三次元大気シミュレーションを行い、新たな水循環レジームを見出すなどの成果を得た。また鉛直水平二次元系で木星型惑星大気の雲対流の計算を進め、凝結性成分の鉛直分布が、一般によく用いられてきた熱平衡モデルと大幅に異なることを見出した。これは観測量の解釈に大きな影響を持つ。[大気進化理論]表層のH20量と中心星放射の違いによって、地球型惑星が大きく異なる表層環境を持つと予想し、地球型惑星の新分類を提起した。観測の進展が期待されるスーパーアースについては、ハビタブルゾーン内に存在する場合は全球海洋で覆われた海惑星である可能性が高い。また天体衝突現象に関連した大気形成と初期進化モデルを提起した。とくに地球型惑星形成の最終段階で期待される巨大衝突後の高温水蒸気大気の進化について、惑星が暴走温室限界を超える中心星放射を受ける場合には大気散逸過程が惑星の冷却率をコントロールする。初期の水量や惑星質量によっては十億年以上の時間スケールでマグマオーシャンを有する状態が持続する可能性があり、これは将来の観測研究への新予想である。[特徴推定]系外惑星大気の放射スペクトルの予測に必要となるモデル群の開発に着手し、地球型惑星を念頭に置いた大気化学モデル、ならびに木星型惑星を念頭に置いた放射対流平衡モデルの構築を進めた。大気化学モデルを深い海洋を有する海惑星に適用したところ、炭素化合物が主としてメタンとして存在する可能性が高いことが分かった。また放射対流平衡モデルを用い木星大気の再現を試みたところ、観測量とのおおよその一致を見た。
2: おおむね順調に進展している
2012年3月15日~17日にかけて研究代表者・分担者・連携研究者・関連研究者および大学院が集合し、相互の研究成果と知見を交換するWSを行った。本計画研究の三本の柱である循環シミュレーション、形成進化理論、特徴推定のいずれにおいても新たな知見が得られており、また将来の観測への予測と将来の観測データの解釈へ向けたモデリングが、論文や学会発表を行いつつ着実に進んでいることから、おおむね順調に進展しているものと判断される。
観測との対比に必須となる大気放射モデリングを加速させるため、博士研究員1名を新規に雇用し、北大・神戸・岡山の三極を結んでテレビ会議を行いながら、循環シミュレーションとの結合も念頭に置きつつ地球型惑星と木星型惑星双方のモデリングを進める。また形成進化理論の構築および解析を担う博士研究員1名を新規に雇用し、系外地球型惑星のモデリングを強化する。また申請者らの整備してきた情報基盤を有効に活用し、全国ネット型のセミナーを随時開くなどするとともに、年1回のペースで他班との相互乗り入れをも視野にいれた合宿型WSを開催することによって、相互の連携を強化する。
すべて 2012 2011 2010
すべて 雑誌論文 (20件) (うち査読あり 18件) 学会発表 (43件)
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