研究領域 | 太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ |
研究課題/領域番号 |
23103003
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
倉本 圭 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50311519)
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研究分担者 |
はしもと じょーじ 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (10372658)
林 祥介 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20180979)
関根 康人 東京大学, 新領域創成科学研究科, 講師 (60431897)
阿部 豊 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90192468)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 系外惑星 / 大気循環シミュレーション / 同期回転惑星 / 大気放射スペクトル / 大気散逸 / ハビタブルゾーン / 射出限界 / エアロゾル |
研究実績の概要 |
[循環シミュレーション] 大気循環シミュレーションプログラムの力学コアならびに、多次元データの入出力ツールの開発を進め、小質量星周りのハビタブルゾーンに多数存在が期待される同期回転惑星の3D大気シミュレーションを行った。その結果、湿潤条件下では昼半球からの惑星放射が射出限界に規定され、放射加熱の余剰分が夜半球にすべて運ばれる熱循環パターンが、広いパラメタレンジで出現することを見出した。同時に木星型惑星の雲対流の数値実験とその解析も進め、対流の間欠性と凝結成分の濃度間に強い相関関係があることが見出された。 [大気進化理論] 表層H2O量と中心星放射を変数とする地球型惑星の表層環境の分類について、類型境界の定量的推定を進めた。これを恒星進化に伴う中心星放射の増大ならびに水蒸気の散逸と関連づけ、系の年齢に応じ一連の類型を経て惑星表層環境が進化する経路の推定を行った。またEUV放射による流体力学的水素大気散逸モデルの開発を進め、研究者によって議論のあった散逸効率を、信頼性の高い数値モデルにより明らかにした。 [特徴推定] 系外惑星大気の放射スペクトルの予測に向けて、地球型惑星を念頭に置いたものと、ガス惑星を念頭に置いたモデルの開発をそれぞれ進めた。双方のモデルを、循環シミュレーションの解釈に応用し、同期回転惑星においては水蒸気大気の射出限界が昼夜間熱輸送に極めて重要であること、木星型惑星においては成層圏の成層が弱く、放射活性物質の供給に対流圏からの擾乱が重要な役割を果たすことが示唆された。またエアロゾル生成とその放射特性を求める実験を進め、エアロゾルの光化学的生成、材料物質の消費、放射加熱間のフィードバック過程によって、各成分の上層大気における存在度が一定の範囲に定まる可能性が示された。これらは系外ガス惑星大気の観測量の解釈に貢献するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポスドクを2名雇用することにより、惑星大気放射モデリングと惑星大気進化モデリングの促進を図った。これらポスドクが中心となって、北海道大・岡山大・神戸大・東京大を結び週1回のペースでテレビ会議による研究ミーティングを進めており、それぞれのテーマについてのモデル構築が順調に進んでいる。ここで開発を進めてきた放射伝達モデルは、同期回転惑星の循環シミュレーション結果に対し有益な解釈を提供した。 2013年3月4日~5日に研究代表者・分担者・連携研究者・関連研究者および大学院生が集合し、相互の研究成果と知見を交換するWSを行った。本計画研究の三本の柱である循環シミュレーション、形成進化理論、特徴推定のいずれにおいても、前年度において提起された問題意識と課題を踏まえ、着実に研究が進んでることが確認できた。またこのWSにおいて、それぞれの柱をつなぐ観点が活発に交換され、同時に、モデリング研究において有益な、超高層大気分野、惑星内部高圧物性分野などとの知見交換を進めることができた。 また系外惑星大気研究の第一人者であるJ. Kasting 教授 (米:ペンシルバニア州立大)およびA. Showman 教授 (米:アリゾナ大)の訪日の際に、ポスドクや院生らを交えて相互の研究を討論するセミナーを行い、進化シナリオの枠組み構築から、循環数値モデリングの詳細に至るまで、広く建設的な意見交換を行うことができた。 成果発表も活発に行われており、本計画研究はおおむね順調に進展しているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
[PD雇用] 2名のポスドクを引き続き雇用し、それぞれ惑星大気放射モデリングと形成進化理論モデリングを進める。開発を進めている吸収係数の波長依存性を厳密に考慮した放射伝達計算モデルの構築を信頼性の検証を行いつつ進める。これと大気化学モデルを併用して、多様な境界条件下・進化段階下での惑星大気の熱的・物質科学的構造の再現、系外惑星大気のスペクトル予測を行い、さらに循環モデリングとの結合を進める。 [密な研究連携の促進] 週一度のペースで行っている北大・神戸大・岡山大・東大間のテレビ会議ミーティングを継続し、常時的に議論を重ねながら研究を進展させる。またエアロゾルの生成過程ならびに光学特性の実験的研究、大気構造モデリング研究、大気散逸モデリング研究間の連携を図ることで、系外惑星大気に関する観測可能量についての予測を進める。また年一度のペースで計画班の全体WSを開催し、周辺分野の研究者も交えながら討論を行うことによって、研究の展開を図る。 [周辺分野との連携] ミニWSなどの機会を設け、大気モデリングに密接に関係する惑星内部物理学分野や超高層大気科学分野など、周辺研究者との交流を進める。 [若手育成] 若手研究者や院生がおこなっている大学横断的な研究ミーティングや文献講読などへの支援を継続する。内外の関連学会・会議・WS等への参画を促し、研究成果の発信のみならず、各々の研究の深化と展開、研究者ネットワークの形成を図る。
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