計画研究
[循環シミュレーション] 小質量星周りのハビタブルゾーンに存在している同期回転地球型系外惑星の気候予測をおこなった。恒星直下点に形成される多雨多湿域が、このような惑星における化学風化率を著しく高め、これによって大気中の二酸化炭素濃度が低下し、強い昼半球・夜半球の温度コントラストが生じやすい傾向があることを見出した。また木星型惑星の雲対流の数値モデルの改良を進め、対流の間歇性をコントロールする因子について明らかにした。[大気進化理論] 地球型惑星の表層環境進化に対する初期水量の違いの影響について、大気・陸水による水循環を考慮したシミュレーション研究を展開した。実際のホットジュピターやスーパーアースを想定した流体力学的大気散逸のシミュレーションを行い、これらの惑星の水素散逸史ならびに初期大気量の推定を行った。また水蒸気混合大気について成層圏温度の推定を行い、オゾン層による紫外線加熱のない段階では成層圏が極めて低温になり、大気からの水蒸気損失が著しく抑制される可能性を示した。[特徴推定] 巨大衝突後の地球型惑星の大気進化について、マグマオーシャンの固化とEUV放射による流体力学的水素大気散を考慮してシミュレートすると同時に、将来の分光観測に向けた放射スペクトル予想と検出可能性の検討を行った。また、低温のガス惑星の熱放射伝達計算に雲による消散効果を加え、熱放射スペクトルから雲量について一定の制約が得られること、ならびに木星においては雲の効果は限定的であり、雲対流数値モデルの結果と基本的に整合的であることを示した。またエアロゾル生成とその放射特性を求める実験結果を反映した光化学モデルを用い、無酸素条件下での地球型惑星大気における有機物生成率の推定を行った。
2: おおむね順調に進展している
北海道大・岡山大・神戸大・東京大を結んだ週1回のテレビ会議によって、地球型惑星・木星型惑星を想定した大気放射伝達モデル構築とその応用が特に若手を中心に展開されている。2014年3月に行われた領域全体の研究会合において、我々が取り組んでいる大気海洋の安定性や大気散逸の解明が、他の班の研究とのフィードバックを強めつつ進展していることを確認できた。また太陽系惑星大気研究者も交えて本計画研究主催のWSを実施し、太陽系惑星を系外惑星大気の理論・数値モデルの検証フィールドに位置づけた議論とともに、研究ネットワークの拡大を進めることができた。循環シミュレーション、大気進化理論、特徴推定のそれぞれについて成果が挙がっており、その発表も活発に行われていることから、本計画研究はおおむね順調に進展しているものと判断できる。
[PD雇用] 2名のポスドクを引き続き雇用し、惑星大気放射モデリングと形成進化理論の構築解析を進める。特に、多様な境界条件下・進化段階下での惑星大気の熱的・物質科学的構造の再現、循環・放射・大気散逸の各モデルの結合、系外惑星大気のスペクトル予測を進める。[密な研究連携の促進] 週一度のペースで行っている北大・神戸大・岡山大・東大間のテレビ会議ミーティングを継続し、常時的に議論を重ねながら研究を進展させる。高度化した放射モデルを組み込んだ惑星大気循環シミュレーションを進め、系外惑星大気の循環構造を探索する。また光化学実験的研究と放射モデリングの結合を進め、系外惑星大気に関する観測可能量についての予測をさらに進める。また計画班の全体WSを開催し、周辺分野の研究者も交えながら討論を行うことによって、融合研究の一層の展開を図る。[周辺分野との連携] 今後もミニWSなどの機会を設け、大気モデリングに密接に関係する周辺研究者との交流を進める。[若手育成] 若手研究者や院生がおこなっている大学横断的な研究ミーティングや合同セミナーなどへの支援を継続する。内外の関連学会・会議・WS等への参画を促し、研究成果の発信のみならず、各々の研究の深化と展開、研究者ネットワークの形成を図る。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (78件) (うち招待講演 8件)
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