計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
円盤の電波観測については,サブミリ波望遠鏡ASTEを用いて,大質量前主系列星に対する円盤ガス観測を進めるとともに,ALMA観測に対する検討を行った。円盤の近赤外線観測については,すばる望遠鏡用近赤外線カメラHiCIAOを用い,10天体を超える若い天体に対して円盤散乱光の撮像観測を実施した。観測手法の工夫により,従来よりも星近傍(約30AU以遠)の様子を鮮明にとらえた結果,溝状や渦巻き状構造といった,惑星の存在が示唆される円盤構造を検出することに成功した(記者発表2件)。中間赤外線観測関連では,あかり衛星近・中間赤外線カメラ観測データの詳細解析を行い,迷光,宇宙線の除去などの精度を向上させ,円盤の研究を進める準備を整えた。また,将来の観測装置に必要な中間赤外線帯のフィルター,ビームスプリッターの詳細設計検討を行った。ダストに関する理論,実験については,まずダスト衝突数値計算結果を総合してダスト衝突モデルを構築し,これに基づきダストの構造進化を考慮しダスト成長・移動数値計算を行った。これにより,原始惑星系円盤におけるダスト光学的進化や微惑星形成を論じる足掛かりができた。微惑星蒸発やダストアグリゲートの散乱光偏光の研究も完成した。また,氷微惑星の衝突破壊・再集積条件に対する空隙率と焼結度の影響を明らかするため,低温室内において雪を用いた衝突実験を行った。その結果,衝突破壊強度の空隙率依存性を明らかにした。円盤ガス化学に関しては,1次元輻射流体計算による星形成コアモデルに基づいて,大型有機分子や炭素鎖分子,およびこれらの重水素比の時間進化を調べた。その結果,大型有機分子,炭素鎖分子ともに原始星コアの進化が進むにつれて増加することが分かった。また低温な高密度コア時代に生成された分子の高い重水素比は,その後原始星周囲で大型有機分子などが生成される際に娘分子に引き継がれることを示した。
2: おおむね順調に進展している
ASTEやすばる望遠鏡の観測時間は問題なく確保できており,世界をリードする成果も出始めている。あかりに搭載された赤外線カメラのデータ整約も順調に進み,特に長波長側の撮像データの信頼性を向上させた。氷の物性測定と衝突実験を行うために必要な-15℃の低温室を設置して稼働させた。原始惑星系円盤におけるダストサイズ,内部構造,空間分布を記述するモデルがほぼ完成した。ダストアグリゲートの衝突時におけるリバウンド条件や分子ガス凝縮素課程の明確化にも進展があった。
おおむね予定通り,研究を推進する。ALMAの共同利用観測の募集時期が遅れ気味だが,計画の大幅な見直しが必要なほどではない。その他の装置による観測研究は当初の想定に沿って進める。中間赤外線観測関連では,あかりの近・中間赤外線カメラのデータを利用して円盤の研究を進める他,フィルターやビームスプリッターについても試作品の低温光学特性の評価を予定通り進める。理論と観測の比較については,ダスト衝突数値計算とダスト成長・移動数値計算から,原始惑星系円盤内においてダストは非常に空隙率の高い構造を持つことが示された。今後そのようなダストの存在を観測的に明らかにする方策を検討していく。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (26件) (うち査読あり 25件) 学会発表 (27件) (うち招待講演 10件) 備考 (2件)
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