計画研究
【円盤観測】HD142527周囲の円盤のALMA観測については,簡単な仮定に基づく解析結果を研究発表や論文を通じて報告した。また詳細なモデル計算との比較に基づき,円盤内でのガス・ダスト比の非一様性を明かしつつある。すばる望遠鏡とHiCIAOを用いた円盤ダストによる散乱光の高解像度撮像も継続し,腕構造を示す円盤を新たに検出した。さらに,中質量星に付随する円盤の散逸を調べた結果,近赤外線に比べ中間赤外線でみた円盤寿命が長いことが分かり,これら円盤では内側と外側とで散逸時間が異なることが示唆された。【原始惑星系円盤の構造やダスト成長の理論】円盤内の氷ダストの付着成長を,その内部構造進化を考慮して解き,kmサイズの微惑星にまで成長可能なことを示した。長年の懸案であったシリケイトダストの成長過程についても,その表面エネルギー値を見直した結果,円盤内で想定される衝突速度で成長が起こりうることが分かった。一方,巨大惑星によるガス円盤ギャップ形成に関しては,ギャップ内で顕著となるガス回転則の変化を加味した再検討により,従来研究に比べてギャップは開きにくいことが新たに示された。【その他】原始惑星系円盤中のガス分子化学進化について,鉛直方向の乱流拡散も考慮して調べ,今年度は特に水分子の振る舞いや重水素比に関する結果を出版した。氷の昇華も考慮した円盤モデルに基づき、将来の大型望遠鏡による複数波長での高分解能観測により,円盤の表面雪線を検出可能なことを示した。また円盤寿命を見積もる手法について,円盤の質量関数による影響を考慮すると、実際の寿命より長く見積もられる場合があることを見いだした。最後に衝突実験関連では,二段式水素ガス銃を用いて様々な種類の弾丸を加速するためサボ分離技術を確立し,2-5km/sでの衝突実験を可能とした。
2: おおむね順調に進展している
円盤観測については,ALMAを用いた観測研究に若干遅れが出ている。これは,チリサイトにおける天候不順や装置トラブルといった外的要因によるものである。しかし一方で,円盤モデルなどの解析に必要な道具立ての整備は進んでおり,来年度以降,十分挽回可能である。一方,可視・赤外線観測については,すばる望遠鏡の観測時間は予定どおり確保できている。宇宙科学研究所屋上望遠鏡用に開発した可視・近赤外線撮像カメラに関しても,ダイクロイック・ミラーの製作と設置が完了し,可視・近赤外線の同時撮像機能を実現した。軽微な改修を残すのみで,科学観測を遂行可能な状態になっている。ダスト成長に関しては,まず原始惑星系円盤におけるダスト成長モデルを構築し,高空隙率のダストが作られることを示した。ミクロンサイズのダストから微惑星サイズの天体に至る道筋を,初めて一貫したシナリオで示したという点で,想定を超える進捗と評価した。また,円盤構造の起源の一つと期待される,巨大惑星によるギャップ形成についてもモデルを作成することができた。観測との共同という観点からは,ダストの光学特性の研究成果がやや不十分だった点が課題として意識はされているものの,すでにグループ内での関係者間の議論は進捗している。物質進化に関する研究についても,ダスト関連で多方面の展開が進捗している他,ガス化学のモデリングについても順調に成果が出ている。特にガス化学については,ALMA観測との比較が開始されており,更なる相乗効果も期待できる。最後に,衝突実験装置に関しては,サボ分離技術の開発が難航したため,当初予定していた衝突装置と低温室の同時運用が遅れている。しかし,その他の研究は予定通りに進行している。以上,研究テーマによって若干の出入りはあるものの,総合的にはおおむね順調に進展していると評価した。
ALMA,すばる望遠鏡を用いた観測を継続する。ALMAについては,Cycle 1/2で採択された観測計画の実施を待ち,これらの速やかな解析・成果発表をはかる。その際には,最新の数値流体シミュレーションに基づき,観測と比較可能なモデルを構築し,円盤構造の起源に関わる諸問題に取り組むための道具立てを整備する。また,ALMAのアーカイブデータの活用も視野に入れ,電波天文分野の研究員1名を新規雇用し,電波観測を専門としない研究者も含め,解析方法などのノウハウの共有を図る。これらにより,観測・理論のより緊密な連携を実現する。ダスト成長や惑星形成の理論についても,観測との比較,及び素過程理解の両面で研究を進める。氷微惑星形成モデルが予言する高空隙率氷ダストに対する観測的検証をめざし,高空隙率氷ダストの光学特性を考慮した円盤輻射モデルを確立する。ダスト付着成長問題に関する国際ワークショップを8月に開催し,ダスト付着力のミクロな物理,及び円盤環境における実際の付着強度に関する研究を促進する。巨大惑星によるギャップ形成については、既に構築したギャップモデルに基づき,ギャップを横切るガス流に対する影響や巨大惑星の円盤ガス捕獲による効果を調べる。円盤ガス化学に関しては,厚さ方向の乱流拡散を考慮したモデルを用いて有機物の振る舞いを調べる。また,ALMAで検出したSO放射の起源やHCO+, N2H+など代表的な分子の存在度に対する解析解を求めるなど,観測結果とより直接的な比較を進める。また,衝撃波加熱によるダスト表面分子反応の影響を評価し,ガス化学モデルへのフィードバックをはかる。衝突実験については,低温室と衝突銃の同時運用により,氷・岩石混合物の高速度衝突実験を開始する。サボ分離技術を用いて,サイズ1~4mmの様々な密度・強度を持つ弾丸を加速し,衝突破壊・クレーター形成実験を行う。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (38件) (うち査読あり 31件) 学会発表 (77件) (うち招待講演 11件) 図書 (1件) 備考 (3件)
Planetary and Space Science
巻: 100 ページ: 1-5
10.1016/j.pss.2014.02.009
巻: 100 ページ: 64-72
10.1016/j.pss.2014.03.017
Nature
巻: 507 ページ: 78-80
10.1038/nature13000
Astronomy & Astrophysics
巻: 563 ページ: 33-67
10.1051/0004-6361/201322446
Icarus
巻: 232 ページ: 266-270
10.1016/j.icarus.2014.01.010
Journal of Chemical Physics
巻: 140 ページ: 114302(11pp)
10.1063/1.4867909
巻: 140 ページ: 074303(16pp)
10.1063/1.4865256
The Astrophysical Journal
巻: 780 ページ: 114 (9pp)
10.1088/0004-637X/780/2/114
巻: 787 ページ: 53 (12pp)
10.1088/0004-637X/784/1/53
The Astrophysical Journal Letters
巻: 783 ページ: L36(4pp)
10.1088/2041-8205/783/2/L36
Astronomical Journal
巻: 147 ページ: 54(9pp)
10.1088/0004-6256/147/3/54
高圧力の科学と技術
巻: 24 ページ: 13-20
10.4131/jshpreview.24.13
巻: 562 ページ: A111 (20pp)
10.1051/0004-6361/201322119
巻: 783 ページ: id. 90 (19pp)
10.1088/0004-637X/783/2/90
Chemical Reviews
巻: 113 ページ: 8961-8980
10.1021/cr4003193
巻: 779 ページ: 11-29
10.1088/0004-637X/779/1/11
巻: 775 ページ: 85-108
10.1088/0004-637X/775/2/85
New Trends in Radio Astronomy in the ALMA Era: The 30th Anniversary of Nobeyama Radio Observatory. ASP Conference Series
巻: 476 ページ: 385-386
2013ASPC..476..385F
巻: 476 ページ: 383-384
2013ASPC..476..383F
巻: 476 ページ: 333-334
2013ASPC..476..333A
巻: 476 ページ: 197-204
2013ASPC..476..197A
巻: 146 ページ: 140-152
10.1088/0004-6256/146/6/140
巻: 559 ページ: A62(8pp)
10.1051/0004-6361/201322259
巻: 557 ページ: L4(4pp)
10.1051/0004-6361/201322151
巻: 139 ページ: 074309(14pp)
10.1063/1.4818639
巻: 554 ページ: A4(12pp)
10.1051/0004-6361/201321325
巻: 556 ページ: A92 (9pp)
10.1051/0004-6361/201321614
Proc. of SPIE
巻: 8837 ページ: 88370M (9pp)
10.1117/12.2026662
巻: 775 ページ: L18(5pp)
10.1088/2041-8205/775/1/L18
巻: 225 ページ: 298-307
10.1016/j.icarus.2013.03.027
遊・星・人: 日本惑星科学会誌
巻: 22 ページ: 152-158
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 65 ページ: L14-L18
10.1093/pasj/65.6.L14
巻: 776 ページ: id. 15 (19pp)
10.1088/0004-637X/776/1/15
巻: 65 ページ: No. 90 (19pp)
10.1093/pasj/65.4.90
巻: 773 ページ: id. 73 (11pp)
10.1088/0004-637X/773/1/73
巻: 772 ページ: id.145 (17pp)
10.1088/0004-637X/772/2/145
巻: 476 ページ: 389-390
2013ASPC..476..389M
巻: 65 ページ: No. 123 (14pp)
10.1093/pasj/65.6.123
http://www.hokudai.ac.jp/news/131004_pr_lowtem.pdf
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/pressrelease/201401177290.html
http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2014/20140117_1