計画研究
原始惑星系円盤については、形成直後の円盤の自己重力分裂過程の力学を詳しく調べ,過去の研究の不十分な点を明らかにした。また、永年重力不安定性により円盤上に多数の縞々構造が生まれ微惑星形成及びデブリ円盤への進化につながる可能性を示した.円盤外縁部から落下する氷ダストの捕獲を考慮した原始惑星の成長・組成進化計算を行い、氷ダストの供給がある限り、岩石原始惑星は10万年程度という短い時間で大型氷惑星へと進化することを明らかにした。また、円盤外縁における回転不安定性とそのALMA観測による検証可能性を調べた系外巨大ガス惑星については、微惑星によるエンベロープ内で生じるH2Oの凝結の効果によって暴走的ガス流入を引き起こす臨界コア質量が大幅に小さくなることを示した.また、視線速度観測された複数惑星系の巨大ガス惑星に対して高精度軌道計算を行い,安定性解析から惑星の実際の軌道を制約した.さらに、標準的なコア集積によっても、直接撮像で検出されているような中心星から離れた巨大ガス惑星が形成され得ることを指摘した。一方で、木星の影の中のガリレオ衛星を反射体として利用し、系外ガス惑星のアナログとなる木星大気中のダストの性質を求めた。系外スーパーアースに関しては、中心星近傍に存在する大型地球型惑星の形成について、巨大衝突段階の多体シミュレーションにより、原始惑星系の質量分布や軌道構造を明らかにした。スーパーアースによる円盤ガス獲得過程と最終的な大気質量を系統的に調べ,モデルによる予言値に比べて実際にトランジット観測されている半径は比較的大きく,低温での集積・惑星移動の可能性が示唆された.一方,中心星に近く高温で,岩石成分が気化しているような大気の性質を明らかにし,観測可能性を調べ、次世代宇宙望遠鏡でスーパーアースが岩石惑星か否かを観測的に区別する手法を開発した。
2: おおむね順調に進展している
巨大ガス惑星の多様性に関連し,高精度軌道計算による軌道安定性解析の手法を確立し、多様性を観測する新しい視点を提示できた。実際の系外惑星観測データとの比較検討は今後の課題であるが、特に現在サーベイが進行中の太陽の数倍の質量の恒星のまわりの惑星系の解析に威力を発揮すると考えられる。また、これまで不可能と考えられてきた標準的なコア集積による中心星から離れた巨大ガス惑星の形成モデルを確立できたことは大きい。スーパーアースの多様性に関連し,高温大気の構造と観測可能性を明らかにすることができた。実際のスーパーアース大気の観測や比較は今後の課題。軌道に関しては、近接大型地球型惑星を含む地球型惑星形成の巨大衝突段階について基本的な物理が明らかにされつつある。今後は円盤ガスとの相互作用を取り入れて調べていく。スーパーアースとハビタブル地球型惑星の作り分けに対しては、円盤氷ダストの成長・軌道移動の素過程から説明を与えるモデルが完成した。
提案した永年重力不安定性は、チリで本格稼動を始めた電波望遠鏡ALMAにより発見されたHL-Tauの縞々構造を説明する可能性がある.また,それが微惑星形成につながる可能性があるため,非線形進化過程などをさらに詳細に調べる.円盤ガス散逸に関する研究の論文化は若干遅れているので、今後光蒸発の流体シミュレーションに重点的に取り組む。最終年度の総合化に向けて、円盤の力学進化と円盤中ダストの熱進化を同時に考慮し,同位体組成や化学組成が太陽系で観測されるものと合う進化過程を明らかにする。たとえば、高速微惑星と弧状衝撃波によるコンドリュール形成の可能性を調べ,円盤ガスの進化や木星の形成についての条件を明らかにする。また、スーパーアースとハビタブル地球型惑星それぞれの形成確率が、原始惑星系円盤の形成初期条件・環境条件とどのように対応づくのかを解明するために、氷ダスト捕獲を通じた原始惑星の成長・組成進化計算を円盤形成・進化計算と組み合わせて実施する。巨大ガス惑星の多様性については、原始エンベロープの重元素汚染によって衝突断面積が拡大するという微惑星集積へのフィードバックを考慮し,コア形成時間削減の可能性を検討する.また、さらに多くの太陽の数倍の質量の恒星の複数惑星系において同様の研究を実行し,太陽質量程度の星周りにおけるの惑星系形成との違いについて,統一的理解を進める.スーパーアースの多様性については、巨大惑星の連鎖集積モデルの検証のために、GPUを用いた大規模多体シミュレーション用コードを開発し、惑星移動・集積・蒸発という一連の進化を考慮した統合モデルを構築する.その上で,トランジット観測による質量と半径の観測値に基いて,形成過程の多様性を理解する.また,短周期スーパーアースがスノーライン以遠から移動してきたかどうかをトランジット2次触観測を用いて検証するため理論を検討する.
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