研究領域 | 先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空への新たな挑戦 |
研究課題/領域番号 |
23104003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浅井 祥仁 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60282505)
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研究分担者 |
中本 建志 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 准教授 (20290851)
陣内 修 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50360566)
田中 純一 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 准教授 (80376699)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | LHC / ATLAS / 超対称性粒子 / ヒッグス粒子 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
H24年度LHCは8TeVで実験が行われ20fb-1を超えるデータ蓄えられ、ついにヒッグス粒子(質量126GeV)がついに発見された。LHCの一つの目的が達成され、素粒子研究の40年来の問題が解決した記念すべき成果であった。(1)本計画研究は、A1,A3,A4班と共同で、ヒッグス粒子発見の鍵となるバックグラウンド評価や消失エネルギーの測定などを高める研究を行った。また、アトラス内部飛跡検出器シリコン半導体測定器(ピクセル、ストリップ)内の物質量評価を粒子のハドロン相互作用を利用してより正確に、より広範囲で行った。荷電粒子トラッキング、ガンマ線コンバージョンなどの評価に貢献した。(2)超対称性を初めとする標準理論を超えた新しい素粒子現象をモデルに依存しない探索を行ったが、現時点では新しい物理現状の兆候を観測するには至っていない。まだ解析途中のものもあり、最終的な結果を得るには時間を要する。 LHC加速器アップグレードにむけての準備研究は、(A)昨年度製作したNb3Alサブスケールコイル2台と、LNBLから貸与されたNb3Snコイル2台を合体させ、11Tを発生する実証用超伝導磁石の組立を行っている。一方で、化合物系超伝導線では、高電磁力下での機械歪みにより臨界電流密度が低減することが知られており、高磁場超伝導磁石へ応用する際の大きな課題である。そこで、複合材料であるRHQ-Nb3Al線材の内部歪みを直接観察することを目的として、J-PARC物質・生命科学実験施設において、中性子回折実験を系統的に実施した。(B) 2022年からのLHC高輝度化アップグレードを目指して、CERNと協力してビーム分離用大口径双極超伝導磁石の開発を開始した。超伝導コイルにはNbTi超伝導ケーブルを用い、超流動ヘリウム冷却によりコイル内径160mmに5T強の磁場を発生する仕様となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒッグス粒子の発見は素粒子研究40年来の重要な成果である。これにより質量の起源の解明が進む。また軽いヒッグス粒子の発見は、何かその質量を軽いままに安定化させる新しい機構が必要であり、これの点から、超対称性研究に新しい方向性が見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)H24 に取得した全データの解析をすすめる。特にトポロジーで分けて系統立って標準理論からのズレの探索や理解をすすめていく。(2)LHCは2015年から14TeVにエネルギーが大幅に増強される。この高い衝突エネルギーで速やかに新粒子を発見するための準備研究を行う。特にバックグラウンドの理解は8TeVでの成果を基にすすめる。(3)アップグレードにむけて、小型のプロトタイプの製作を行い、性能の評価ならびに工業化にむけての研究をすすめる。
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