研究領域 | 先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空への新たな挑戦 |
研究課題/領域番号 |
23104005
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
戸本 誠 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80432235)
|
研究分担者 |
寄田 浩平 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (60530590)
長野 邦浩 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (90391705)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 素粒子実験 / トップクォーク / LHC-ATLAS実験 / 飛跡トリガー / 湯川結合 / 国際共同実験 / CERN |
研究実績の概要 |
トップクォーク物理に関して、LHC-ATLAS実験が平成23年に取得した重心系エネルギー7TeVの陽子・陽子衝突データと平成24年に取得した重心系エネルギー8TeVのデータ解析のまとめを行なっている。具体的には、トップクォーク対生成断面積の精密測定を行なうために不可欠となるジェットをレプトンと誤識別する割合を導出し、背景事象を見積もった。その結果、高い純度のトップクォーク対事象の獲得に成功し、世界最高精度でトップクォーク対生成断面積を測定できることを示した。この結果は、平成26年度中にまとめられる。さらに、トップクォーク対にbクォークが付随する事象の断面積測定、トップクォークの電荷、トップクォークの偏極度など、トップクォークの様々な性質を非常に高い精度で測定することができた。(戸本、寄田)。トップクォーク対の普遍質量や横運動量を関数とした微分断面積の測定にも着し、様々な角度から、トップクォークをプローブとする標準模型の検証、および、新物理探索の研究を推進させることができた。
高速飛跡再構成トリガーFTK回路のR&Dでは、これまでの試作機の経験を活かした最終版モジュールを完成させた。長時間運転時の放熱試験、最終的なデータ処理試験などを早稲田大学とCERNのテストベンチで実施した。既存のμ粒子トリガー、電子・光子トリガーなどに高速飛跡再構成トリガーを導入した場合のデータ収集効率を見積もり、高輝度LHC実験における新しいトリガー論理の提案をまとめた(長野、寄田)。以上の結果を、国際共同研究者会議にて頻繁に発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LHC-ATLAS実験が平成23年と平成24年の実験(Run1)で蓄積した全データを詳細に解析して、平成27年から予定されているRun2実験の開始前に、これまでのトップクォーク対生成断面積の測定に関して、様々な測定結果を発表することができた。特に、トップクォーク対にbクォークが付随する断面積の測定はttH過程による湯川結合の測定を実施する上で不可欠であり、平成27年から開始する13TeVの準備となる。 高速飛跡再構成トリガーFTK回路の開発に関しても、平成27年から予定されているRun2実験の開始前に実験モジュールの開発を終えることができた。 以上から、これまでのデータを用いた研究に対する総まとめは順調で、平成27年からの重心系エネルギー13TeVのデータ収集の準備が着実に進んでいると結論できる。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き平成23年と平成24年の実験(Run1)で蓄積した全データを詳細に解析して、トップクォーク対生成断面積の測定に関する総まとめを行なう。世界最高感度による測定が期待できる。 高速飛跡再構成トリガーFTK回路の開発・コミッショニングを完了させ、平成27年からのRun2実験のデータ収集の準備を終える。
|