研究領域 | 先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空への新たな挑戦 |
研究課題/領域番号 |
23104006
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
野尻 美保子 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (30222201)
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研究分担者 |
兼村 晋哉 富山大学, 理工学研究部, 准教授 (10362609)
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キーワード | 素粒子論 / 素粒子実験 |
研究概要 |
LHC実験において初期探索の成果が現れ始めた。超対称粒子生成のバックグラウンドとなりうる標準模型のプロセスが、MC シミュレーションと良く一致することが明らかになり多くの生成、崩壊チャンネルについて探索結果が発表されるようになった。このなかで比較的軽い超対称粒子で、超対称間の粒子の質量差が小さいために発見から逃れてるケースが重要と考えられるようになった。そこで、縮退した新粒子がLHC で生成され、新粒子の最も軽いものが安定であるUED 模型において、始状態からの放射(ISR) を用いて発見する可能性について検討した。またジェットを含む信号のスピン相関について考察した また、第四世代のベクトル的な粒子(t') が、標準模型を越える物理に対して重要な役割を果たしていることから、この粒子を含む模型について、発見や模型パラメータの決定について考察した。この粒子がトップ粒子やヒッグス粒子に崩壊することから、このようなシグナルについて研究をはじめ、3 b jet のシグナルなどを通じて、第4世代の t' 粒子について、発見能力を著しく向上できることを明らかにした。 一方兼村はヒッグス粒子の兆候が、明らかになってきたことから、ヒッグスダブレットを増やした模型、トリプレットヒッグスを含む模型、一般的な ヒッグスダブレットを2つ含む模型など、様々なヒッグスセクターの拡張についてLHC でのシグナルやリニアコライダー計画での物理の検討を行った。またヒッグス粒子の性質を検討する上で比較的発見しやすい、W へのモード、Z へのモード、ガンマへのモードだけではなく、tau レプトンを含む終状態を発見することは模型を制限する上で重要であると考えられた。そこで、野尻らはヒッグスのタウへの崩壊のキネマティカルな情報を使って、ヒッグス再構成を向上する方法について検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重要な過程に絞ってプロジェクトを立ち上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2011年度は、ヒッグス粒子の質量が140GeV 程度ではないかという兆候があり、もっともシンプルな超対称模型ではなく、第四世代がある超対称模型やシングレットを含む超対称模型など、超対称模型の拡張が急務となった。拡張された模型で期待される新しい物理でLHC に関係するものとしては、ヒッグス粒子の質量の輻射補正に関係する第四世代の粒子や、スカラートップの質量パラメーターは小さい、あるいはスカラートップが大きく混合していることにより、スカラートップだけが軽いスペクトルなどが考えられる。これらはトップを含む信号を予言するので今後はこれについて注目して研究を行う。 またヒッグス粒子の生成、崩壊分布が精密に測れると期待されることから、ヒッグス粒子分岐比率に対して標準模型からのずれを予言する模型に対して再検討を進める必要がある。このなかでもとくに、超対称模型とは相補的な役割をもつ余剰次元模型のヒッグスラディオン混合から予言される現象に注目した研究を行いたい。
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