研究領域 | 先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空への新たな挑戦 |
研究課題/領域番号 |
23104009
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
細谷 裕 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50324744)
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研究分担者 |
林 青司 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80201870)
尾田 欣也 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60442943)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 素粒子理論 / 余剰次元 / ヒッグスボゾン / ゲージ・ヒッグス統合 / 細谷機構 / テラスケール |
研究実績の概要 |
素粒子の力の統一は対称性の自発的破れと表裏一体であり、標準理論ではヒッグスボゾンが対称性の自発的破れを引き起こす。このヒッグスボゾンらしきものが、LHCで発見されたが、その正体は不明である。我々の世界の時空が5次元以上あるとすれば、その反映としてヒッグスボゾンが全く違う形で出現する。余剰次元の存在を確認することで、新しい時空像を打ち立てようというのがこの研究課題である。 細谷と折笠は、質量126GeVのヒッグス粒子を実現するSO(5)xU(1) ゲージ・ヒッグス統合理論を構成した。5次元目のAB位相, KK質量, ヒッグスボゾンの3点,4点結合定数, ZボゾンのKK励起粒子の質量などの間に、理論の詳細によらない普遍的な関係があることを示した。AB位相が決まれば、他の量が予言され、今後の実験で検証できる。ヒッグス粒子の2光子への崩壊幅も評価し、KK粒子の寄与は非常に小さい事を示した。低エネルギーでは、ゲージ・ヒッグス統合理論は標準理論とほぼ同じ予言を与えるが、次のLHC実験でZボゾンのKK励起粒子を観測できるはずである。 林はゲージ・ヒッグス統合理論におけるフレーバー混合がいかにおこるかを明らかにした。FCNCをおこさないための制限についても調べた。尾田は、標準模型において裸の結合定数を用いて裸のヒッグス質量への寄与を求め、トップクォーク質量が170GeVであれば、切断スケールはプランクスケールとなることを示した。 細谷は、細谷機構をSU(3)格子ゲージ理論の数値シミュレーションで解析し、ゲージ対称性の自発的破れが、非摂動的に起ることを示した。 2013年3月13日~15日には、「International Workshop: Toward Extra Dimensions on the Lattice」を大阪大学で開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現実的なゲージヒッグス統合モデルが構成でき、実験との詳細な比較が可能になった。このモデルは、今のところ、全ての実験データと誤差の範囲で consistent である。標準模型との差は、エネルギーをあげた次のLHCの実験で現れる。新しい粒子の予言、ヒッグスボゾンの結合定数が小さくなることなど,興味深い結果がでた。 格子ゲージ理論で細谷機構が検証できることを示したのも大きな成果だ。格子ゲージ理論分野でも新しい領域を作り出した。
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今後の研究の推進方策 |
すでに構成した現実的なSO(5)xU(1) ゲージ・ヒッグス統合理論の解析をすすめ、次の実験への予言を明確にする。とくに、クォークレプトンのゲージ結合、ヒッグスとの結合、KK粒子スペクトル等の詳細を調べる。また、必然的に出現する暗黒物質の量を決め、WMAP等の観測と比較する。 細谷機構の格子ゲージ理論シミュレーションをすすめる。SU(3)理論で結合定数、フェルミオン質量を変化させ、相図を完成する。
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