研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
23105002
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 眞浩 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50217428)
|
研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
|
キーワード | 有機分子触媒 / 不斉合成 / 物質変換 / 水素結合 / 酸触媒 / 環境調和 / 分子認識 / 反応場 |
研究概要 |
環境負荷の軽減を目的とした有機変換反応の高効率化と高選択性の実現は有機合成化学者に課された命題の一つである。特に新規触媒反応系の設計はこうした効率化と高選択的反応の開発を推し進める上で益々重要となってきている。申請者はこれまで、有機変換反応における最も古典的かつ汎用性の高い触媒であるブレンステッド酸に不斉認識や分子認識などの基質認識能を付与した有機分子触媒の設計開発に取り組み、ビナフチル骨格を不斉源とするキラルモノ-リン酸触媒の開発に成功している。これまでの開発研究により、キラルモノ-リン酸によって活性化が可能な官能基はかなり広範囲に渡るようになってきた。しかし、その一方で従来のキラルモノ-リン酸触媒では不充分な反応系も依然として数多い。今後、医薬品など多岐に渡る光学活性化合物の需要に応えるには、触媒反応系のさらなる拡充が益々重要な課題となってきている。本計画研究は、こうした要請に応えるため、酸性官能基を同一分子内に複数組み込むことで、それらの分子内水素結合を分子設計戦略とする新たなキラルブレンステッド酸触媒系、多酸系複合型触媒の設計開発を目的とする。平成23年度にキラルモノ-リン酸触媒の発展系として、同一分子内にリン酸官能基を二つ組み込んだキラルビス-リン酸触媒の設計開発に成功した。平成24年度は、このキラルビス-リン酸の開発時における知見をもとにさらなる構造修飾により、高機能化を試みるとともに、機能発現の本質を理解し、さらなる展開を図るうえでの指針の確立を目指した。特にこれまでのビス-リン酸では、pseudo-C2対称性を有する分子設計を進めてきたが、二つのリン酸部分の役割分担、すなわち、酸性度を向上させるためのリン酸と、反応基質を活性化するためのリン酸基とを作用分離させたC1対称なビス-リン酸触媒を新たに開発し、その機能評価をDiels-Alder反応により実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究では、申請者がこれまで開発研究に取り組んできたキラルブレンステッド酸による触媒反応系のさらなる発展系として、酸性官能基を同一分子内に複数組み込むことでそれらの分子内水素結合を分子設計戦略とする多酸系複合型触媒の設計による新たな制御システムの開発を計画している。平成24年度は、前年度に開発に成功したキラルビス-リン酸の開発時における知見をもとにさらなる構造修飾により、高機能化を目指すとともに、機能発現の本質を理解し、さらなる展開を図るうえでの指針の確立を目指した。特にこれまでのビス-リン酸では、pseudo-C2対称性を有する分子設計を進めてきたが、二つのリン酸部分の役割分担、すなわち、酸性度を向上させるためのリン酸と、反応基質を活性化するためのリン酸基とを作用分離させたC1対称なビス-リン酸触媒を新たに設計開発し、その機能評価をDiels-Alder反応により実施した。具体的には、立体効果を考慮した置換基と、酸性度の向上を意図して電子求引性置換基をそれぞれ導入した新規なC1対称なキラルビス-リン酸触媒を用い、触媒活性の向上、エナンチオ選択性の向上に成功し、これまでのpseudo-C2対称性を有するキラルモノ-リン酸触媒ならびにキラルビス-リン酸では成し得なかった高活性の獲得と高選択性の獲得に成功した。この開発により、キラルビス-リン酸の活性化機構の解明、さらなる適用範囲の拡充などへと展開が可能となったことから、研究計画に従っておおむね順調に進展していると評価される。
|
今後の研究の推進方策 |
申請者がこれまで開発研究に取り組んできたキラルブレンステッド酸による触媒反応系のさらなる発展型として、酸性官能基を同一分子内に複数組み込むことでそれらの分子内水素結合を分子設計戦略とする多酸系複合型触媒の設計による新たな制御システムの開発を計画している。これまでの研究でキラルモノ-リン酸触媒の発展系として検討を進めてきた同一分子内にリン酸官能基を二つ組み込んだキラルビス-リン酸触媒の設計開発において一定の成果を挙げることに成功している。平成26年度は、このキラルビス-リン酸の開発時における知見をもとにその適用範囲の拡充を目指し、触媒反応系の幅広い検討を計画している。一方で、キラルビス-リン酸の高機能化を目指すとともに、機能発現の本質を理解し、さらなる展開を図るうえでの指針の確立を目指して構造修飾の検討も進めてきた。従来の設計指針であるpseudo-C2対称性を離れ、二つのリン酸部分の役割分担、すなわち、酸性度を向上させるためのリン酸と、反応基質を活性化するためのリン酸基とを作用分離させたC1対称なビス-リン酸触媒の設計開発に成功し、平成25年度はその機能評価をすることで、作用分離が可能であることを明らかにした。平成26年度は、こららの知見をもとに、異なる酸性官能基を組み合わせた多酸系複合型触媒の開発に取り組むことを計画している。
|