計画研究
環境負荷の軽減を目的とした有機変換反応の高効率化と高選択性の実現は有機合成化学者に課された命題の一つである。特に新規触媒反応系の設計はこうした効率化と高選択的反応の開発を推し進める上で益々重要となってきている。申請者はこれまで、有機変換反応における最も古典的かつ汎用性の高い触媒であるブレンステッド酸に不斉認識や分子認識などの基質認識能を付与した有機分子触媒の設計開発に取り組み、ビナフチル骨格を不斉源とするキラルモノ-リン酸触媒の開発に成功している。これまでの研究により、キラルモノ-リン酸によって活性化が可能な官能基はかなり広範囲に渡るようになってきた。その一方で従来のキラルモノ-リン酸触媒では不充分な反応系も依然として数多い。今後、医薬品など多岐に渡る光学活性化合物の需要に応えるには、触媒反応系のさらなる拡充が益々重要な課題となってきている。本研究は、こうした要請に応えるため、酸性官能基を同一分子内に複数組み込むことで、それらの分子内水素結合を分子設計戦略とする新たなキラルブレンステッド酸触媒系、多酸系複合型触媒の設計開発を目的とする。平成23年度にキラルモノ-リン酸触媒の発展系として、同一分子内にリン酸官能基を二つ組み込んだキラルビス-リン酸触媒の設計開発に成功した。平成27年度は、このキラルビス-リン酸の開発時における知見をもとにさらなる構造修飾により高機能化を試みるとともに、機能発現の本質を理解するため計算化学による検証を検討した。これまでのビス-リン酸では、pseudo-C2対称性を有する分子設計を進めてきたが、二つのリン酸部分の役割分担、すなわち、酸性度を向上させるためのリン酸と、反応基質を活性化するためのリン酸基とを作用分離させたC1対称なビス-リン酸触媒を新たに開発し、その機能評価をDiels-Alder反応により実施し、併行して計算化学による検証を進めた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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