研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
23105003
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
秋山 隆彦 学習院大学, 理学部, 教授 (60202553)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 不斉合成 / 有機分子触媒 / アトロプ異性体 / リン酸 / NMR / 触媒設計 |
研究実績の概要 |
本研究計画では,申請者が開発した(R)-ビナフトール由来のキラルリン酸がキラルブレンステッド酸触媒として優れた不斉触媒能を示す機構を明らかにし,触媒開発の指導原理を明らかにする事により,更に優れた有機分子触媒の開発,ならびに実用的な不斉触媒反応の開発を目指して研究を進めている。 平成24年度の検討において,ビフェニル化合物をリン酸触媒を用いて臭素化する事により,軸不斉化合物が光学純度良く得られることを見出した。この不斉臭素化反応において,基質とリン酸との水素結合ネットワークが,臭素化反応の進行のみならず不斉発現に重要な役割を果たしている事を明らかにした。また,この過程の中で,最適な触媒を選択する際に,1H NMRを用いる事のできる可能性についての示唆を得る事ができた。すなわち,触媒と基質の錯体のNMRを測定する事により,等価な水素が分裂し,その分裂の大きさにより,触媒を選択できる事を明らかにする事ができた。本研究は,これまで合成する事が容易でなかった,アトロプ異性体の不斉合成のみならず,触媒設計に対する新しい知見を得る事ができた点興味深いと考えられる。 この知見をもとに,リン酸の触媒を設計し,面対称を有するビフェノール誘導体にリン酸触媒存在下臭素化剤としてN-ブロモフタルイミドを作用させると,対称性が崩れ,軸不斉を有するビフェノール誘導体を光学純度良く得られることを見出した。更に,得られたモノブロモ体に対して,更に臭素化を施すと,顕著な速度論的光学分割が進行する事も明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では,申請者が開発した(R)-ビナフトール由来のキラルリン酸がキラルブレンステッド酸触媒として優れた不斉触媒能を示す機構を明らかにし,触媒開発の指導原理を明らかにする事により,更に優れた有機分子触媒の開発,ならびに実用的な不斉触媒反応の開発を目指して研究を進めている。今回見出した,NMRを用いる手法は,この課題に対する1つの解決策を提供するものと考えられる。他にも,新たな不斉触媒反応の開発も地道に進めており,おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(R)-ビナフトール由来のキラルリン酸を用いた不斉合成反応の開発を,強力に推進する。特に,高い触媒活性を示す触媒を開発し,効率的な反応を見出す事を引き続き展開する。特に,今回見出したNMRを用いる手法をもとに,理論化学の研究者との共同研究も強力に推進し,更に優れた不斉触媒の開発にも注力する。
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