研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
23105005
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
山中 正浩 立教大学, 理学部, 准教授 (60343167)
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研究分担者 |
内丸 忠文 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (00151895)
都築 誠二 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (10357527)
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キーワード | 有機分子触媒 / キラルリン酸触媒 / プロリノール型触媒 / ハロゲン結合 / 量子化学計算 / 反応機構 |
研究概要 |
本研究では、様々な有機触媒反応の制御システム(基質/触媒間の相互作用や活性化、立体制御など)について分子レベルで理解すると同時に、得られた知見に基づく合理的・革新的な有機分子触媒の設計開発を目的としている。本年度は、リン酸系およびプロリノール系有機分子触媒による不斉反応の制御機構解析、ならびに弱い分子間相互作用に関する精密解析を行った。本年度は、リン酸系およびプロリノール系有機分子触媒による不斉反応として、インドールとニトロアルケンのFriedel-Crafts反応、および[6+2]環化付加反応を取り上げ、量子化学計算を用いた理論的解析を行った。前者においては、反応制御機構としてインドールとニトロアルケンが協奏的に活性化される二点配位型遷移状態を経由することを見出し、リン酸触媒の置換基とインドールのベンゼン環との立体反発が立体制御に深く関わることを見出した。後者においては、反応経路に沿って反応中間体や反応遷移状態の安定性を評価し、立体選択性や不斉識別のメカニズムに対する理解を深めることができた。一方、有機分子触媒による反応制御機構の理論的解析をさらに緻密に行っていくためには、種々の弱い分子間相互作用の詳細(作用機構、相互作用の強さ、方向依存性)を明らかにする必要がある。本年度は、弱い分子間相互作用の一つであるハロゲン結合の詳細を明らかにするために、ハロベンゼン、ハロアルカンとピリジンの相互作用を高精度ab initio分子軌道法により解析した。その結果、引力への静電力の寄与が大きいこと、ハロゲン結合の強い方向依存性は主に静電力が原因であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A01班の秋山、A03班の林らによる実験研究と連携し、それぞれ開発を進めているリン酸系およびプロリノール系有機分子触媒による不斉反応について立体選択性や不斉識別の制御機構を解明した。また有機分子触媒反応のより緻密な理解や精密設計に必須と考えられる弱い分子間相互作用の解析として、ハロゲン結合の引力の作用機構、強い方向依存性の原因を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度では、まず実験研究と理論研究の連携を実現し、有機触媒反応の制御システムに対する分子レベルの理解と合理的な有機分子触媒の設計開発に向けた基礎を確立できたと考えている。また、理論計算においても重要課題であり、有機分子触媒反応において特に重要と考えられる弱い分子間相互作用についても、ハロゲン結合の解析に関して一定の成果が得られた。今後も、リン酸系およびプロリノール系有機分子触媒についてDiels-Alder反応、Michael付加反応、Aza-Darzens反応、臭素化反応などを検討しつつ、その他の有機分子触媒についても領域内の共同研究を推し進め、有機分子触媒反応の理論的解析に関する知見を蓄積していく。さらに、ハロゲン原子と芳香環の間に働くハロゲン/π相互作用おける引力の作用機構、方向依存性などについて解析を進めることにより、有機分子触媒反応に対する理論的解析の幅を広げる。以上のように、AOI班の「触媒設計」に対する理論的側面の充実を推進するため、初年度に引き続き計算機資源の充実を図る。
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