研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
23105005
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
山中 正浩 立教大学, 理学部, 教授 (60343167)
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研究分担者 |
内丸 忠文 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (00151895)
都築 誠二 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (10357527)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / キラルリン酸触媒 / プロリノール触媒 / ハロゲン結合 / 理論計算 / 反応機構 |
研究実績の概要 |
本研究では、様々な有機触媒反応の制御システム(基質/触媒間の相互作用や活性化、立体制御など)について分子レベルで理解すると同時に、得られた知見に基づく合理的・革新的な有機分子触媒の設計開発を目的としている。本年度も引き続き各班の実験研究者と連携して、有機分子触媒による不斉反応の制御機構解析や弱い分子間相互作用に関する精密解析を行った。A01班の秋山、寺田と連携して、リン酸系有機分子触媒による不斉反応について理論的解析を行い、反応制御機構を明らかにした。また、A02班の川端と連携として、ピロリジン-ピリジン触媒によるα,α’-アルケンジオールの幾何異性選択的アシル化反応について理論的検討を行い、水素結合ネットワークの形成に基づく立体制御機構を解明した。A03班の長澤と連携では、グアニジン-ウレア触媒による不斉酸化反応について理論的検討を行い、水素結合およびπ/π、CH/π相互作用によって適合誘導的に不斉反応場を構築する立体制御機構を解明した。A03班の林との連携では、様々なプロリノール系有機分子触媒の分子構造と触媒能や不斉識別能を詳細に調べた。さらに、プロリノール系有機分子触媒の反応における不斉シクロペンタジエン付加反応等の反応機構および不斉識別機構に関する計算化学的解析を進めた。一方、有機分子触媒による反応制御機構の理論的解析をさらに緻密に行っていくためには、種々の弱い分子間相互作用の詳細(作用機構、相互作用の強さ、方向依存性)を明らかにする必要がある。本年度は、π/π,CH/πなどの分散力を主な原因とする弱い分子間相互作用を密度汎関数法で解析する手法について、A01班の寺田、山田、鳴海、A02班の柴田と連携しながら検討を行った。さらに、硫黄やテルルなどのカルコゲン原子を含む分子の分子間相互作用の解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A01班の秋山、寺田、山田、鳴海、A02班の川端、柴田、A03班の林、長澤らによる実験研究と緊密に連携し、それぞれに開発を進めている有機分子触媒による不斉反応について、反応機構から立体選択性、不斉識別の制御機構までを明らかにした。また、有機分子触媒反応のより緻密な理解や精密設計に必須と考えられる弱い分子間相互作用の解析として、置換基がハロゲン結合に与える影響を解明するとともに、カルコゲンの分子間相互作用の強さや引力の原因を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立した実験研究と理論研究の連携は順調に進展しており、リン酸系有機分子触媒とプロリノール系有機分子触媒だけでなく、構造的自由度の高いピロリジン-ピリジン触媒、グアニジン-ウレア触媒についてもシステム制御の理解が進むとともに成果が表れている。今後も、リン酸系およびプロリノール系有機分子触媒を中心に、イミンの不斉還元反応、アズラクトンの直接的不斉アルドール型反応、不斉シクロプロパン化反応、不斉シクロペンタジエン付加反応について、前年度までの解析結果を踏まえて、解析モデルの精密化と解析手法の高度化をはかり、反応の不斉識別と立体制因子に関する解析結果をまとめる。一方、これまでの班員との幅広い連携によって解明した反応制御機構と立体制御機構について総括しながら、合理的な有機分子触媒設計の指導原理を開拓する。また、弱い分子間相互作用の精密解析も順調に進んでおり、一定の成果が得られている。π/π、CH/π相互作用などの芳香族分子の弱い相互作用の解析結果をまとめるとともに、ハロゲン結合とカルコゲンの相互作用の比較についても解析を進める。
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