研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
23105007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹本 佳司 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20227060)
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キーワード | チオ尿素触媒 / 水素結合 / マイケル付加 / ヒドラジノ化反応 / 不斉Neber反応 / 二置換アレン合成 / ペタシス反応 / ヒドロキシチオ尿素触媒 |
研究概要 |
第一世代のチオ尿素触媒とは異なる水素結合形成能を有する新触媒として2-アミノベンゾイミダゾールAと2-アミノキナゾリノンB、3-アミノベンゾチアジアジン-1,1-ジオキシドCの合成を行った。それら触媒の水素結合能の指標として、塩素アニオンとの会合定数を分光学的手法により求めた結果、C > チオウレア > B > Aの順に低下することを明らかにした。次に、我々が既に報告している幾つかの不斉反応について新たに合成した触媒を用いてそれらの触媒効率を調べたところ、ニトロアルケンへのマロン酸エステルのマイケル付加では従来型のチオウレア触媒が、β-ケトエステルのヒドラジノ化反応ではキナゾリノン型触媒Bが、それぞれ最も高いエナンチオ選択性を示した。これらの結果から、触媒の水素結合能と触媒活性あるいは立体選択性は直接的な相関性があるわけではなく、むしろ反応の種類や反応基質の構造に強く依存することが判明した。さらに、新たな不斉触媒反応の開発を目指して、まだ優れた触媒的不斉反応が少ない様々な不斉触媒反応を中心に我々独自で構築した触媒ライブラリーを活用して探索した結果、ケトオキシムスルホン体からの不斉Neber反応によるアジリン合成、α―アルキニルエステルの不斉水素異性化反応による二置換アレン合成に有効な不斉有機触媒を見出した。 有機ホウ酸試薬を求核剤に利用できる有機触媒の開発を目指して、有機ホウ酸試薬と可逆的に反応しエステル結合を形成しうる水酸基を導入したヒドロキシチオ尿素触媒を活用した触媒的不斉合成反応を検討した。その結果、ヒドロキシチオ尿素触媒を用いることで α-イミノアミドとビニルホウ酸エステルのペタシス反応が高いエナンチオ選択性で進行することを見出し、医薬品化学上非常に興味深いN-アリールアミノ酸の触媒的合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、第一世代のチオ尿素触媒とは異なる新触媒を設計しその合成法を確立した。また、それらの水素結合形成能を比較するとともに既存の不斉反応を指標として反応効率を調べることにより触媒構造―触媒活性相関明らかにした。反応中間体や遷移状態などを明らかにするために合成を予定した複合体については、1つの遷移状態モデルの合成については合成に成功し、現在スペクトル解析を行っているところである。さらに不斉反応としては、計画した殆どの反応(不斉アジリン化反応、二置換アレンの不斉合成、α-イミノアミドへのペタシス反応など)に関して、新触媒ライブラリーを活用した最適化を行うことができた。このように、計画通りに研究が進行したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新触媒の合成に成功したことから、今後は新触媒の有用性を示すためにこれまで成功例のない不斉触媒反応を中心に検討して行く予定である。また、新しい触媒設計の際に有益な知見を与えてくれる触媒メカニズムの全貌を解明するために、今期に合成した反応中間体や遷移状態類似のモデルのスペクトル解析を駆使し分子内、分子間相互作用を明らかにしたい。さらに、それらの情報を活用したさらに高度な触媒合成を計画してゆく。
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