研究実績の概要 |
昨年度までに見出した新触媒ならびに新規触媒反応を活用して、下記の成果を得た。 [1]新規ベンゾチアジアジン触媒を利用した分子内不斉オキサマイケル付加反応の合成的応用として、血小板凝集阻害薬として上市されているベラプロストの初の触媒的な形式不斉全合成を行った。また、[2] 2-アミノマロン酸ハーフエステルとアルデヒドとの脱炭酸型アルドール反応を精査し、シンコニジン由来のスルホン酸アミド触媒を用いることで、最高90% eeでアンチ-β-ヒドロキシ-α-アミノ酸を合成することに成功した。さらに、[3]アミノチオ尿素と有機ボロン酸を組み込んだ新規ハイブリッド触媒がα,β-不飽和カルボン酸へのヒドロキシルアミン誘導体の直接的な分子間アザマイケル付加反応と分子内オキサマイケル付加反応に有効であることを発見し、β-アミノ酸やトコフェロールの触媒的不斉合成を達成した。[4] アンチ-α,β-ジアミノ酸の一般的な触媒的不斉合成法を検討し、キラルリン酸触媒とホスフィンを用いた直行型二元触媒を用いることで、(4Z)-アルキリデンオキサゾロンからE,Z異性化とBocNHOHの不斉マイケル付加を経て、一挙に4-アミノ-アンチ-イソキサゾリジノン体が位置及びエナンチオ選択的に得られることを見出した。一方で、[5]ルイス酸として知られるTMSIとヨードイミダゾリウム塩(XB供与体)とのハロゲン結合相互作用を利用することで、シリコン原子のルイス酸性を高められると考え、アルコールとTMSNuの触媒的なカップリング反応を検討し、ヨウ素とXB供与体を触媒量添加するだけで、アルコールを活性化することなくアリル化やシアノ化が収率良く進行することを明らかにした。これらの知見をさらにチオ尿素触媒とヨードイミダゾリウム塩とのハロゲン結合相互作用に展開することで、新たな二元触媒系を見出し、糖誘導体に対するアミドのN-グリコシル化にも成功した。
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