研究概要 |
有機合成化学は官能基変換の化学として発農してきた。本研究ではこれまで培ってきた官能基変換の化学を分子変換の化学へと飛躍させ、糖類などの多官能基性化合物の位置選択的官能基化への展開を目的とする。即ち、基質分子全体を官能基の集合体と捉え、期待される位置選択性発現を担う基質認識側鎖と触媒活性中心を組み合わせた種々の有機触媒を設計合成し、標的とする位置選択的分子変換を行う。本年度は8つの遊離水酸基を持つ強心配糖体lanatoside Aの位置選択的官能基を行った。本研究で開発した触媒存在下、アシル化は4''''位選択的に進行し、種々の官能基化されたアシル基の一段階位置選択的導入に成功した。また、新しいニトロキシル型酸化触媒の開発を目指し、電子チューニングを基盤とする酸化触媒を開発した。本触媒はベンジルアルコールの酸化に特異性を持ち、またラセミ体アルコールの酸化的速度論的分割にも有効に作用した(選択性、s値:up to 25)。また、アミノアルコール類の遠隔位不斉アシル化を行い、酵素法でも前例のないσ-対称-1,7-ジオールの高選択的な不斉非対称化を達成した(選択性=up to 97%ee)。本不斉非対称化は4置換炭素をプロキラル中心に持つσ-対称-1,7-ジオールでも高選択的に進行した(選択性:up to 98%ee)。さらに、酵素法でも前例のない4置換-α,α-アルケンジオールの高幾何異性選択的アシル化にも成功した(選択性up to 98%)。
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