研究実績の概要 |
有機合成化学は官能基変換の化学を基軸に発展してきた。本研究ではこれまで培ってきた官能基変換の化学を基盤とし、糖類などの多官能基性化合物を官能基の集合体として捉え、その位置選択的官能基化をテーマに『分子の全体構造を見据えた分子変換の化学』への展開を目的としている。 我々はこれまで糖類の位置選択的アシル化を行ってきた。昨年度は分子間の識別へと展開すべく、糖特異的アシル化触媒の開発を行い、グルコース特異的アシル化法を開発した。このような分子の全体構造の識別は、通常困難な遠隔位不斉誘導を可能にする。この考えに基づき、昨年度はさらに、σ-対称1,7-ジオールの遠隔位不斉誘導に基づく高選択的不斉非対称化法を開発した。 本年度は抗癌剤タキソールの合成前駆体である10-Deacetylbaccatin III の位置選択的アシル化を行った。また、C2-対称有機触媒を用いる 1,5-ジオール特異的なアシル化の機構を実験的かつ理論計算により検証し、有機触媒の2つの分子認識側鎖が基質認識に協同的に作用する機構を提案した。また、これらの2つの分子認識側鎖を持つC2-対称有機触媒の簡便なライブラリー構築法を開発した。
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