研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
23105009
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
根東 義則 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90162122)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 有機触媒 / オニウムアミド / 脱プロトン化 / 芳香環 / 芳香複素環 / 炭素アニオン / 有機ケイ素 / 二酸化炭素 |
研究概要 |
有機分子触媒を用いる芳香環および芳香複素環の脱プロトン化-修飾反応を新しい反応剤である系内発生オニウムアミドを用いて行った。オニウムとしてはテトラアルキルアンモニウムのほかにホスファゼニウムP5を用いて検討したところP5に高い反応活性と熱安定性が認められ、比較的高温条件においても分解せずに反応活性を保持することが明らかになった。脱プロトン化は芳香複素環のpKaが33程度までの種々の部位において適用可能であり、またさまざまなカルボニル化合物存在下に反応を行い、1,2付加反応が進行することを明らかとした。また、P5Fを用いることにより、芳香族ケイ素化合物から炭素アニオンを容易に発生することができ、二酸化炭素と反応させることで芳香族カルボン酸が得られることも判明した。この際、芳香環上のケイ素基の隣接にクロロ基がある場合には、ベンザインも発生し二酸化炭素が導入されたカルボン酸とベンザインが反応することによりキサントン誘導体が得られることもわかった。キラルなオニウムを用いる不斉反応についても検討を行ったが、現時点では不斉誘導は確認できず、芳香族炭素アニオンの反応性が高いためオニウムと対となる反応活性種の不斉認識がやや難しいことも考えられ、さらに別の不斉誘導法を検討している。また、脱プロトン化反応において種々の有機ケイ素化合物を添加し、触媒回転の効率化を検討した際に、有機ケイ素化合物によっては芳香環のケイ素化反応が進行することが明らかとなり、この反応の適用範囲の拡大に向けてさらに検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機合成における新しい脱プロトン化の反応剤としてオニウムアミドが有効であることを示し、芳香環の修飾反応の触媒として機能しうることを明らかにすることができた。この反応についてはまだ研究の初期の段階であり、芳香環上の反応にみならず脂肪族の化学においても今後更なる適用範囲の拡大が期待される。またアミドアニオンの新しい反応開拓においても端緒を見出しており、芳香族ハロゲン化合物の還元反応や新しい炭素-炭素結合生成反応の新たな展開の可能性が見出されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はオニウムアミドを用いる合成反応の精密化をはかり、エナンチオ選択的な反応、高度に化学選択的な反応などの開発を進めていく。またオニウムアミドとしてはヘキサメチルジシラジド(HMDS)アニオンが特に利用価値が高いことが示されており、このアミドアニオンの構造と反応性の関係など理論的な解析も検討する。またHMDSアニオンが芳香族ハロゲン化合物に対してラジカルを介在すると考えられる還元反応をおこすことも予試験的に見出しており、新反応開拓へと展開できるものと考えている。
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