計画研究
前年までの検討で、タミフルの2ポットでの合成を完成させていた。本年度はワンポットでの全合成を目指して研究を行った。昨年度、上海有機化学研究所のMa等の研究報告を参考に、反応のメカニズムを詳細に検討した。その過程において、Ma等の実験の再現性が得られなかった。Ma等は鍵反応であるα―アルコキシアルデヒドとシスニトロアルケンとのdiphenylprolinol silyl etherを用いる不斉触媒マイケル型反応において、高いジアステレオ選択性で目的物を得ているが、我々が反応を行うと、低いジアステレオ選択性しか得られなかった。種々条件検討を行う事により、生成物が容易にエピメリ化することを見いだした。反応溶媒、添加する酸の酸性がエピメリ化の促進に重要である事がわかり、溶媒としてクロロベンゼン、酸としてクロロ酢酸を用いた時に優れた成果を得る事ができた。以下、これまでのタミフル合成で確立した手法に従い、ドミノマイケル/分子内ホーナー・ワズワース・エモンス環化反応、トルエンチオールのマイケル付加/異性化反応、ニトロ基のアミンへの還元反応、チオールのレトロマイケル反応を全て1つの反応容器で行い、タミフルのワンポット合成を実現した。本合成手法はエバポレーションによる溶媒の留去、溶媒の交換を行う事なく、順次反応試剤を加えていくという簡便な実験操作でタミフルを合成する事ができる。また、途中36時間かかる反応があるが、その他は比較的短時間で進行する反応であり、反応を開始してからわずか3~4日後には合成が完了する。グラムスケールの合成を行ったところ、28%の収率で目的物を得ることができ、実用的なタミフル合成手法である事を示す事ができた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していたタミフルのワンポットでの合成を実現できた。6段階を一つの反応容器で行い、しかも、エバポレーションによる溶媒の留去、溶媒の交換を行う事なく、順次反応試剤を加えていくという簡便な実験操作である。合成がわずか3~4日で行え、グラムスケールの合成で28%の収率が得られる。予想以上の成果を上げる事ができたと考えている。
昨年度の検討で、タミフルのワンポットでの合成に成功した。そこで次年度はさらに実用的なタミフル合成に関して検討を行う。すなわちワンフローでタミフルを合成できないかという課題である。フロー化学は大きな設備を必要とせず、必要なところで、必要な量の化合物を合成する事のできる実用的な合成手法である。近年フロー化学は注目を集めている。我々の開発したワンポット合成はエバポレーションによる溶媒の留去、溶媒の交換を行わないため、ワンフローに適用可能でないかと考えた。遅い反応とか、固体塩基を用いる反応があり、フローを適用するにはいろいろな課題があるが、次年度はこの新たな課題に挑戦したい。
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