研究実績の概要 |
これまでのタミフルの合成検討において、バッチ方式での1時間でのワンポット合成を確立していた。本年度はフローでの合成を試みた。バッチ法で開発した変換反応をフローに適用する際に、バッチの最適化がそのまま適用できない変換反応がいくつかあったが、再度各変換反応をフロー用に流速、チューブの長さ(行路長)、濃度、温度の最適化を行った。溶液で進行する変換反応に関しては、バッチ条件を元に最適化することができた。しかし、唯一固体反応試剤である亜鉛を用いたニトロ基のアミンへの還元反応に関しては、そのままではフロー化学が適用できず、現在も検討を継続している。 タミフルの合成以外では、有機触媒を用いた不斉マンニッヒ反応を鍵反応とするEzetimibeの合成、ニトロメタンとα, β―不飽和アルデヒドの不斉マイケル反応を鍵反応とするBaclofenの市販品からのワンポット合成、不斉アルドール反応を用いたRQNー18690A (18-Deoxyherboxidiene)の合成、および数回の不斉アルドール反応を鍵反応とする超強力な生物活性を有するAmphidinolide Nの7,10-エピマーの合成を達成した。 さらに有機触媒を用いた素反応に関しては、β, β-2置換α, β―不飽和アルデヒドの不斉Diels-Alder反応による不斉4級炭素の構築法の開発、ジクロロアセタルデヒドを求電子アルデヒドとする異なるアルデヒド間の不斉クロス・アルドール反応の開発を行った。いずれも高い不斉収率で進行する実用的な光学活性化合物合成法である。
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