研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
23105011
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩渕 好治 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20211766)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機触媒 / キラル素子 / 不斉合成 / 酸化触媒 / 生物活性物質 / ヒドロアズレノイド / ニトロキシルラジカル / オキソアンモニウム塩 |
研究実績の概要 |
本研究は、著者らが独自に開発したニトロキシルラジカル型有機分子触媒およびキラル3級アミン型有機分子触媒の有用性を開発し、これより高機能キラル合成素子の創製を通じて、精密有機合成における未来型分子変換の具現化を目指すものである。当該研究期間においては、特に有用医薬資源リード分子構造として注目を集めるbicyclo[5.3.0]decane環(ヒドロアズレノイド)システムの実用的かつ環境調和した合成法の開発を目指す。 計画研究の2年目に当たる本年度は、前年度開発したシクロヘプタノイド素子を基点としてNazarov反応によるヒドロアズレノイド骨格の効率的構築を検討した。その結果、素子の機能性を発揮して所望のbicyclo[5.3.0]decane環を構築する条件を見出すことができた。一方、昨年度に見出した不斉Kornblum-DeLaMare転位生成物(γ-ヒドロキシケトン生成物)を基質とする超原子ヨウ素試薬:Koser's 試薬による酸化的エーテル化反応の適用性拡張について検討を行った。シクロヘプタン環の基質では一部、収率に不満を残すものの幅広い基質適用性を確認することができた。興味深いことにシクロオクタン環基質を同様の反応条件に付したところ、新規環開裂反応が進行してキラルブテノリド化合物が得られることを見出した。これより反応条件を最適化してキラルブテノリド合成素子の短工程合成ルートを開発するとともに、天然物合成に応用して本反応の有用性を実証した。また、キラル1,2-グリコールの選択的酸化によるα-ヒドロキシアルデヒドあるいはケトンおよびα-ヒドロキシカルボン酸型合成素子の合成を目指した検討を行った結果、所期の目的からは逸れたが、高効率でグリコール基質の酸化的開裂を惹起してカルボン酸を与える新規反応を開発することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までで、独自に開発したシクロヘプタノイド素子を基点として、bicyclo[5.3.0]decane環(ヒドロアズレノイド)システムを効率的に構築する2つの経路、具体的には、(i) Diels-Alder反応および (ii) Nazarov環化反応を鍵工程とする合成経路を開発できた。これにより多様な誘導体に変換するための基盤が整備された。また、超原子価ヨウ素試薬:Koser's試薬(PhI(OH)OTs)を用いた新規酸化的分子変換反応を見出し、これよりキラルブテノリド型合成素子を開発することに成功した。また、当初の計画にはなかったが、有機ニトロキシルラジカルを用いた反応検討において1,2-グリコール類を高効率的に酸化してカルボン酸を高収率で与える条件を確立することに成功した。以上の成果に基づき、本研究は概ね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討によって、多様な官能基を備えたキラルbicyclo[5.3.0]decane環(ヒドロアズレノイド)誘導体を自在に合成することが可能となった。今後は、これまで得た成果を活かして高付加価値ヒドロアズレノイド化合物の合成展開を行い、本方法論の有用性を実証する。一方、不斉Kornblum-DeLaMare反応の適用において顕在化した基質適用性の限界という問題について、独自の触媒を設計・合成して解決を図りたい。
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