研究実績の概要 |
最近微生物代謝産物より見出された新規生理活性天然物Arisugacin類を標的化合物として、有機触媒を駆使して、化合物を量的に確保すると共に誘導体合成も可能な効率的な新規分子骨格法の確立を目的に合成研究を行った。その結果、α-Iononeを出発原料として得られたα, β-不飽和アルデヒドとα-ピロン環を用い種々条件検討した結果、THF溶媒中有機触媒であるL-prolineを2当量用い加熱還流することにより収率61%でArisugacin骨格を有するオレフィン化合物を立体選択的に合成できた。次に12a位への水酸基の導入を検討した結果、1位の水酸基が大きな立体障害になっていることが判明し、その立体を反転させた後、過酢酸を反応させることで、12a位に水酸基が導入出来た。次の12位水酸基のデオキシ化の条件はEt3SiH、TFAで収率良く進行した。最後に1位水酸基をケトンに酸化して、さらにそのα位のフェニルセレニル化、過酸処理による脱離によってエノンに変換することでArisugacin Aの不斉全合成を達成出来た。また、我々は様々な有用なマクロライド化合物を有しておりそれらは医薬、動物薬(Avermectin, Leucomycin, Tylosin, Erythromycin, 等)として使用されている。そこで、今回共同研究として川端先生らが開発した光学活性ピリジン誘導体を利用してAvermectin B2aの位置選択的アシル化反応を検討した。その結果、通常の条件では起こらない位置選択制を示し、さらにアシル基および光学活性有機分子触媒の選択によりAvermectin B2aの位置選択的アシル基導入が可能となった。
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