計画研究
Avermectin類は、1979年に北里研究所の大村らによって単離された顕著な抗寄生虫活性、抗昆虫活性を有する天然有機化合物であり、その誘導体であるIvermectinは、現在でも河川盲目症として知られるオンコセルカ症をはじめとする様々な感染症に利用されている。さらにAvermectin類は、現在でもその適応症が広がっており、その標的症に合わせた構造の最適化が必要となっている。Avermectin B2aは、8つの天然類縁体の内で最も酸素官能基化された類縁体であり、その複雑な骨格に4つの水酸基を有している。今回我々は、京都大学の川端先生によって開発された基質認識型有機触媒を用いたAvermectin B2aの位置選択的アシル化を検討した。まず、Avermectin B2aをCHCl3中、1当量の無水酢酸、コリジン存在下、DMAPを触媒量用いて-40 oCで撹拌したところ、5位アセチル体と4”位アセチル体が混合物(5-acylate : 4”-acylate = 1.4 : 1.0)として61%収率で得られた。その際、5, 4”-ジアセチル体が20%、原料1が18%回収され、7位および23位水酸基のアセチル化は確認されなかった。同様の条件下、川端触媒2を用いて反応させたところ、ジアセチル体の生成量が大幅に減少し、高収率かつ高位置選択的にモノアセチル体が得られた(78%, 5-acylate : 4”-acylate = 15.5 : 1.0)。本触媒の立体異性体を計4種検討したところ2が最も良い選択性、収率を示した。以上のように、川端先生らが開発した基質認識型触媒2は、複雑な骨格を有するポリオール天然物のアシル化においても、有益な位置選択性を示すことが分かり、今後の構造活性相関研究の推進が期待される。
2: おおむね順調に進展している
本新学術領域において共同研究を進めており、その中で京都大学の川端先生が開発した光学活性ピリジン誘導体を用いて、北里で発見されたAvermectin B2aの位置選択的アシル化を検討したところ、通常の条件では起こらない位置選択制を示し、さらにアシル化剤および光学活性有機触媒を変えることにより、Avermectin B2aの位置選択的アシル化が出来ることを見出すことができた。これにより一つの目的は、ほぼ達成することが出来た。
引き続き、北里で発見されたユニークな生理活性天然物に関して、様々な有機触媒を用いた実践的な合成法の確立を行っていきたい。また、北里で保有している興味ある生理活性天然物を用いて、様々な有機触媒による位置選択的なアシル化を行い、より優れた薬剤の創製を行っていきたい。
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