計画研究
我々は、北里研究所で見出された特異な分子骨格を有し、しかも有用な生理活性を示す微生物由来新規天然物をリードとした創薬研究に取り組んでいる。昨年度は、京都大学の川端先生らが開発した基質認識型有機分子触媒である光学活性ピリジン誘導体を利用して、北里で発見された顕著な抗寄生虫、抗昆虫活性を有するAvermectinの天然テトラオール類縁体であるAvermectin B2aの位置選択的モノアシル化、および、Pyripyropeneテトラオール体の位置選択的アシル化による新規農薬ME5343の効率的合成を検討し、本触媒が複雑な骨格を有するポリオール天然物のアシル化においても、有益な位置選択性を示すことを明らかとした。当該年度は、新規有機分子触媒反応の開発と特異なインドリンスピロアミナール骨格を有するネオキサリンの全合成に取り組んだ。ネオキサリンを合成する鍵反応の一つとしてアルデヒドとイソシアニドのα付加反応に着目し、独自の仮説に基づき本反応を触媒する有機分子を精査した結果、3,5,6-トリフルオロ-2-ピリドンが本反応を触媒することを初めて見出した。開発した本反応と、3a-ヒドロキシフロインドリンの不斉を利用したリバースプレニル基の立体選択的導入、適した位置に窒素原子を有するインドリンのニトロンへの酸化を経由したインドリンスピロアミナール骨格構築およびイミダゾールを利用したE選択的なデヒドロヒスチジンの構築を鍵にネオキサリンの初の全合成を達成した。さらに、本合成経路を基に類縁天然物であるメリアグリンA、グランジコリンAおよびオキサリンの初の全合成を達成した。さらに、合成したネオキサリン類および、その合成中間体の抗感染症活性を調べたところ、合成中間体がアフリカ睡眠病の起因寄生虫であるトリパノソーマに対し、殺原虫活性を示すことを初めて明らかとした。
2: おおむね順調に進展している
独自に理論に基づき、イソシアニドとアルデヒドのα-付加反応を触媒する有機分子を精査した結果、3,5,6-トリフルオロ-2-ピリドンが本反応を触媒することを初めて見出した。これにより、前例のない有機分子触媒を用いたα-ヒドロキシアミドの不斉合成法開発の土台が出来た。さらに、本手法を用いて特異な構造を有するネオキサリン類を合成できたため、構造活性相関研究の推進が期待される。
光学活性2-ピリドン型有機分子を新規に設計・合成し、独自に開発した2-ピリドン触媒を用いたイソシアニドとアルデヒドのα付加反応を触媒的不斉合成へ展開する。有機分子触媒を用いたβラクトンの立体選択的構築、多置換フラン環の立体選択的構築、アルドール反応によるフラグメントの連結を鍵に、特異な三環性骨格を有し、既存の薬剤と同等の抗トリパノソーマ活性を示すマングロマイシン類の全合成に着手する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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