研究概要 |
生体内で行われている細胞の分化,増殖,組織形成の過程はいまだ十分に理解されていない.このため実験条件を調整しやすいIn vitro系での組織構築技術が重要となる.そこで,超高速操作技術を利用して細胞特性をデータベース化し,細胞システムの活動を追跡し,自律誘導するための最適な環境場とダイナミック刺激との関連を明らかにすることが目的である.本研究の特色はオンチップで超高速にマイクロ・ナノロボットを操作し,マイクロ流路技術に物理的操作技術を導入し,細胞の分離,個別培養,局所環境制御,計測を行い,リアルタイム解析を実現する点にある.本年度は細胞のマルチパラメータ計測のための計測技術の基礎と実験的評価を実施した. (1)フロー式細胞マルチパラメータ計測 (1-1)オンチップロボティクスの微細加工技術基盤:オンチップロボティクスに必要となる,ナノビーム,三次元ナノ加工技術基礎を確立した.フェムト秒を利用したナノ光露光,マスク露光を利用したフォトリソグラフィを利用した. (1-2)細胞の力学的,化学的パラメータの高速計測:細胞を変形させるための可動部を有するマイクロ流体チップを製作した,変位縮小機構を用いることで,可動部の位置決め精度を従来と比べて6倍程度向上できた.細胞の弾性と粘性を計測するための基礎を築いた.また,AO1の金子らと共同で,可動部がない,細胞の硬さの指標を高速に計測することが可能なマイクロ流体チップを製作した.(1-3)細胞の電気的パラメータの高速計測 マイクロ流体チップ内で,フロー方式で連続的に電気インピーダンスの変化を検出した. (2)フロー式細胞マルチパラメータ計測のための校正用マイクロビーズの作成と評価 (2-1)マイクロビーズのパラメータ設計と加工を行った.
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今後の研究の推進方策 |
フロー式細胞マルチパラメータ計測を継続して進める.可動部を有するマイクロ流体チップを製作し,可動部を動かして細胞を変形させることで細胞の弾性と粘性を計測する実験を継続して進める。特に,ガラス基板を用いたパッケージングに関して検討し,計測の安定性を高めることが課題といえる,また,A01の金子らと共同で,引き続き,より高速計測可能なマイクロ流体チップを改良して製作する.更に培養細胞の特性評価と分離として,培養・細胞の特性評価の基礎実験を進める.応用例としてはA03の鈴木らと共同で,骨の分化の過程をオンチップでモニタリングするデバイスを検討する.
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