計画研究
平成25年度は、細胞ストレス試験データ取得に向け、はじめに高速アクチュエータのバックラッシュレス化(研究分担者:多田隈建二郎)、さらに高速アクチュエータ・高速ビジョンで構成されるフィードバックシステムの制御ソフトウェアの改良(研究分担者:東森充)を行なった。その後、細胞ストレス試験の詳細実験及び細胞ストレス試験を行い(研究代表者:金子真、研究分担者:多田隈建二郎)、発生する細胞表面の”あざ”の正体について考察した。細胞を極細マイクロ流路内に繰り返し往復運動させていると、ストレス印加回数に応じて細胞伸展特性と細胞変形回復特性が徐々に低下し、やがて細胞表面に”あざ”のようなものが現れ、その後、両特性性能とも一気に悪くなる傾向を示すことがわかった。平成25年度に得られた興味深い知見は、細胞長さが変化しなくなるストレス印加回数が一回目の伸展特性と強い相関を示すことである。このことは数百回~数千回ものストレス印加を細胞に加えなくても、わずか一回のストレス印加で細胞のストレスに対する影響を見積もることができるため、超高速細胞特性評価という本研究の目的達成にはきわめて重要な知見である。さらに往復運動中に現れるあざを共焦点顕微鏡で観察することを試みた(研究代表者:金子真)が、細胞制御用の光学系と共焦点顕微鏡用の光学系が互いに干渉してしまい、静止細胞に対しては画像データが取得できたものの、ストレス試験中の細胞の細胞画像取得には至らなかった。ただし、光学系を工夫することによって、両者の干渉を避ける方法が見いだせたことは次のステップに繋げるという意味において意義深いと考える。
1: 当初の計画以上に進展している
超高速細胞特性計測という本研究の元々の目的に対して、すでに最大400個/秒で細胞変形能計測を実現している。さらに平成24年度に細胞ストレス試験という当初計画にない新たしい細胞特性評価方法を提案し、統計的評価を行うとともに、わずか一回のストレス試験で、その細胞がどの程度のストレスに耐えられるかという予測方法まで開発していることが、当初の計画以上に進展していると判断する主な理由である。
平成26年度以降、二つの方向性を考えている。①計測精度の向上:細胞特性には必ずばらつきがあるため、統計的処理を行わざるを得ない。一方、計測系の測定精度が悪いと、統計的処理して得られたばらつきが細胞集団本来のばらつきなのか、計測系に起因するばらつきなのか分離できない。細胞集団本来のばらつきを抽出するため、アクチュエータ系の位置決め分解能向上を目指した新しいアクチュエータシステムにチャレンジする。アイデアについては予備実験が終わった段階である。②能動的良細胞生成:能動的に細胞にアクションを加え,細胞自体の活性度を向上させる方法にもチャレンジする。この点についてもすでに予備実験を行い、いままでに報告されていない新しい力学ベースの細胞活性化法の有効性を確認している。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Lab on a Chip
巻: 14 ページ: 1135-1141
10.1039/c3lc51003d
IEEE Transactions on Biomedical Engineering
巻: 61 ページ: 1187-1195
10.1109/TBME.2013.2296624
Biomaterials
巻: 34 ページ: 9018-9025
10.1016/j.biomaterials.2013.08.006
巻: 34 ページ: 9082-9088
10.1016/j.biomaterials.2013.08.029
Journal of Physiology - Heart and Circulatory Physiology
巻: 305 ページ: H1658-H1667
10.1152/ajpheart.00349.2013
PLOS ONE
巻: 8 ページ: e68893
10.1371/journal.pone.0068893
http://www.dma.jim.osaka-u.ac.jp/html/seeds/ja/2254/10681490/O130001_kaneko.pdf