研究概要 |
フルイディクスを利用した高速細胞アセンブリのために,シート状・ファイバー状のハイドロゲル材料中に細胞を高速に包埋する技術開発を行った。リソグラフィーあるいは機械加工によって微細加工を施したPMMAあるいはPDMSポリマー基板を積層化することによりマイクロ流体デバイスを作製し,細胞アセンブリ実験を行った。流路内に形成される安定な多相層流を利用することで,微細加工を施したハイドロゲルシートおよびファイバーの作製を行い,主に培養細胞を用いて,異種細胞を高密度かつマイクロメートルオーダーの正確性で埋包することが可能であった。さらに,異種細胞との共培養系が細胞機能に与える影響を評価したほか,細胞を分化条件において培養することによってその機能発現を制御することが可能であった。また,細胞移植担体として利用した際に血流を阻害しない形状である非球形ハイドロゲル粒子および,通常のプロセスでは作製困難な極微小ハイドロゲル粒子の作製を行い,細胞を埋包し培養することによって,その有用性を実証した。なおこれらの実験において,流体デバイス内の親疎水性が重要な要素であったため,プラズマ処理およびシラン化処理を行い,その検討および評価を行った。 これらのフルイディクスを用いた細胞の配置実験に加え,微細加工ハイドロゲル培養基材を用いて非球形(トロイド・シリンドロイドなど)の細胞集塊を形成し,細胞種の違いによる集塊形成挙動の変化を観察するとともに,それらをアセンブルすることによって管腔状細胞組織の構築を行った。また,フルイディクスを駆使した細胞の分離・選抜手法として,水力学的濾過法と磁気泳動を組み合わせた2因子(大きさ+表面マーカー)細胞分離システム,大量処理のための細胞分離システムの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
比較的大きな組織を体外で構築するためのハイドロゲル材料の作製については,当初の予定通りその作製プロセスの構築を当初の予定通り順調に行うことができた。また,包埋した細胞の機能評価についても順調である。加えて,細胞分離・選抜プロセスの構築および,細胞集塊の形成とアセンブリという,当初の計画以上の成果が得られており,概ね当初の計画以上に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目となる平成24年度は,個別単位構造の複合化を行うことによって,より大きな細胞組織体の形成を試みるほか,細胞選抜技術とフルイディクスによる細胞アセンブル技術の複合化による新規システムの構築を目指す。また,細胞の機能維持・分化制御の観点から,ハイドロゲル中へのアセンブリ技術について,その条件(濃度・組成・種類・流路構造・流速等のパラメータ)の更なる最適化を行い,埋包する際の血管や肝構造等の複合組織の形成について引き続き検討を行う。また,ハイドロゲル・フルイディクスを利用した管腔を有する多層組織構造体の形成について検討を行う。
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