研究領域 | 超高速バイオアセンブラ |
研究課題/領域番号 |
23106007
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関 実 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80206622)
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研究分担者 |
山田 真澄 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30546784)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / 組織工学 / マイクロ流体システム / バイオアセンブラ / マイクロフルイディクス / 再生医工学 / 細胞培養 / バイオプロセス |
研究実績の概要 |
平成26年度は,生体を模倣した立体的な組織体を形成するための基盤技術として,異方的なハイドロゲル材料を用いた細胞アセンブリプロセスに加え,コラーゲンあるいはゼラチンによって構成された微小な細胞接着性の粒子状・繊維状材料を作製するための技術開発を行った。そして,これらの材料を用いた3次元培養のための新規手法の開発を行った。特筆すべき成果としては,以下の項目が挙げられる。(1)微細加工チャンバーを利用して細胞接着性粒子と血管内皮細胞を複合化し立体を形成することによって,3次元的な毛細血管ブロックの作製が可能であることを示した。(2)肝細胞スフェロイド形成における細胞接着性粒子の役割について,初代肝細胞を用いた詳細な機能評価を行うことで,肝細胞機能維持において適切な粒子・細胞比率が存在することを確認した。(3)これらの粒子作製における基盤技術として,タンパク質からなる粒子の形状制御およびそのメカニズム解明を行うとともに,応用としてリン脂質など多様な素材からなる微粒子の形成を行った。(4)潅流培養可能な肝細胞ファイバーの作製において,酸素濃度をモニタリングし,また供給流量を制御することで,生体組織に近い酸素消費の再現可能性を示した。(5)癌細胞の浸潤評価を可能とするアッセイ系について,これまでの複合ファイバーを利用した実験系における癌細胞の機能発現を遺伝子発現の点で詳細に解析するとともに,上皮細胞癌をモデルとしてその浸潤度合を簡便に評価できる,新規複合型ハイドロゲルシートを利用した実験系の構築を行った。以上の結果から,フルイディクスを駆使した細胞アセンブリ手法として,微小な機能性・異方性ハイドロゲル材料を用いた組織構築手法の有用性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroにおける3次元組織構築において,複合型のハイドロゲル製微小材料の持つ有用性を実証することができた。特にコラーゲン等のタンパク質材料を用いて微小な粒子を作製し培養に用いる,という新規基盤技術を開発したこと,また,当技術を他の機能性粒子状材料の作製へと応用したことは,当初想定していた以上の成果であったと言える。また,潅流培養時の条件が細胞機能に与える影響については,肝細胞・血管内皮細胞についてそれぞれ詳細に評価を行うことができたため,3次元組織の設計・構築において潅流培養の重要性を示すことができた。In vivoにおける評価については現時点で計画を推進中であるが,全体として概ね計画通りの進捗が得られたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き,これまでに作製した異方性ハイドロゲル材料の更なる機能化と,単位組織の集積化・複合化による生体構造を模倣した組織の作製を試みる。肝小葉ブロック組織の作製・血管モデルの作製については,特に生体外マトリックス再構築という観点から,潅流培養の条件等をさらに最適化することによって,生体模倣組織の再構築という課題にどこまで対応しうるか評価したい。なお班間連携によって,これまでに作製した3次元組織のIn vivoにおける機能発現を評価する実験を行う予定である。特に肝細胞を用いて作製した線形の組織体について,実験動物に対し移植を行い(例として肝障害モデルマウスの腹腔内への肝細胞索モデル組織の移植),異方的なハイドロゲルを用いて作製した生体模倣組織の,生体内における評価を行い,バイオアセンブラにおける3次元細胞システム構築および細胞社会学の両コンセプトの融合による成果を示したいと考えている。
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