研究領域 | 超高速バイオアセンブラ |
研究課題/領域番号 |
23106008
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹内 昌治 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90343110)
|
研究分担者 |
尾上 弘晃 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30548681)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 知能機械 / マイクロマシン / マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 / 再生医学 |
研究実績の概要 |
平成25年度は、(1)磁場応答性プレートによる細胞表面における寄生虫の挙動解析、(2)マイクロプレートによる神経細胞回路構築と計測基盤構築、(3)バクテリアセルロースによるマイクロプレート構築、(4)パリレン上での温度応答性樹脂積層の条件検討を行った。 (1)磁場応答性プレートを利用した細胞表面における寄生虫の挙動解析は、鉄、ニッケル合金であるパーマロイを組み込んだマイクロプレート上に細胞を播種し、外部磁場をかけることで角度を制御し、共焦点顕微鏡によって観察を行った。従来の共焦点顕微鏡観察では、XY軸方向の分解能は高いが、Z軸方向の分解能は低い。本マイクロプレートを用いることで、Z軸方向についても高い分解能での観察ができるため、宿主細胞表面における寄生虫の挙動を観察することができた。本解析結果は論文にまとめ、Advanced Materials誌に報告した。(2)マイクロプレートによる神経回路の構築においては、デザインしたマイクロプレート上に神経細胞の培養細胞であるPC12を播種した。また、細胞が播種されたマイクロプレートをマイクロピンセットでハンドリングすることに成功した。さらに、これを解析するため、金電極をパターンした基盤を構築した。(3)また、パリレンのかわりにバクテリアセルロースをマイクロプレートの素材として利用することにも成功した。(4)パリレン上に温度応答性時樹脂を積層した。本研究は、A03班大和グループと共同で行った。当初、温度応答性樹脂を積層した際、パリレンが基盤より剥がれたが、パリレン蒸着の条件を最適化することで、パリレン上への温度応答性ポリマーの積層に成功した。また、細胞の接着・解離に最適な樹脂濃度の検討も行った。 また、本年度はマイクロプレートのハンドリングに関して、論文にまとめて、Small誌に発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度に確立した細胞がのったマイクロプレートの磁場による三次元的なハンドリング技術を用いて、今年度は宿主細胞上での寄生虫の挙動について解析を行い、寄生虫の挙動に関して知見を得、また、この結果を国際誌である Advanced Materials 誌に報告した。これは、計画当初では想定していなかった技術開発とその応用事例であり、本研究課題が当初の研究計画以上に進展しているといえる。 加えて、細胞の組立も、実際の応用事例の一つとして、人工的な神経回路の設計・組立に着手しており、本年度の研究では、マイクロプレート上への神経細胞の播種、神経細胞を播種したマイクロプレートのハンドリングに成功している。また、ハンドリングしたマイクロプレート上の細胞を観察したところ、ピンセットでハンドリングした後も生存していることが確認された。これにより、任意の神経細胞回路の構築を行うための基盤技術が構築できたといえる。さらに任意の神経細胞回路構築後に回路の検証を電気的に行うための金電極のパターンも行った。これは、細胞による組織構築の当初計画よりも進んだ計画にあたり、この点においても、本研究課題が当初計画よりも進展しているといえる。 マイクロプレートの素材についても、パリレンの代わりにバクテリアセルロースを用いる技術も確立しており、当初計画にない進展がある。 三次元細胞組織においても、前年度までに細胞折紙技術により組織構築については完了しており、構築した組織からマイクロプレートをはがす技術については、細胞接着層として用いる温度応答性樹脂の条件検討が進んでいる。 以上のことから、本研究課題は当初計画より進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの研究により、細胞播種及び培養に適したマイクロプレートの作成、及びハンドリング技術が確立された。また、平成26年度の研究により、神経細胞の培養細胞であるPC12の播種・培養、そしてハンドリングにも成功している。そこで、平成26年度は、細胞のみからなる三次元組織形成の検証に加えて、神経細胞がのったマイクロプレートによって人工的な神経回路の構築の基盤技術構築を行う。 細胞のみからなる三次元組織を構築するために、細胞接着層として、温度応答性樹脂を用いる。温度応答性樹脂を積層したパリレンをプラズマエッチングによってパターンした後、細胞を播種し、細胞折紙技術によって三次元組織を構築した後、培養温度を下げることにより、細胞をマイクロプレート上からはがし、三次元組織中の細胞の振る舞いを観察する。 天然の神経回路を構築する神経細胞は、樹状突起と軸索をもっており、それぞれが情報のインプットとアウトプットを担っている。平成25年度の研究では、培養細胞であるPC12を用いたので、樹状突起と軸索の形成は見られなかった。そこで平成26年度は、ラットの海馬由来の神経細胞を用いることで、樹状突起と軸索の形成を行う。樹状突起と軸索形成の検証は特異的に発現する抗体をターゲットとした免疫染色によって行う。また、細胞がのったマイクロプレートをマイクロピンセットで配置することにより、神経回路の構築を行う。神経回路構築の評価は、平成26年度は顕微鏡観察によって行う。複数のマイクロプレートにより神経回路を構築した場合、マイクロプレートをこえて、細胞が分布する。そこで、マイクロプレート間をタイムラプスで観察して神経細胞の振る舞いを観察することで、回路の形成有無を評価する。
|
備考 |
(1)手島哲彦,優秀ポスター賞(CHEMINAS) (2)手島哲彦,ポスター賞(第13回 東京大学生命科学シンポジウム) (3)手島哲彦, Student travel award(Stanford University)(4)吉田昭太郎, 優秀ポスター賞(第30回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム)
|