研究領域 | 超高速バイオアセンブラ |
研究課題/領域番号 |
23106008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹内 昌治 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90343110)
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研究分担者 |
尾上 弘晃 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30548681) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 知能機械 / マイクロマシン / マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 / 再生医学 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、(1)人工的な神経ネットワーク構築のため、マイクロプレート上でのプライマリーセルの培養と(2)本領域のタスクフォース研究である医療応用が可能なデバイスの開発の二つを実施した。 (1)の人工的な神経ネットワーク構築については、プライマリーセルをマイクロプレート上で培養することに成功した。当グループではこれまで、マイクロプレート上に神経様細胞である PC12 を任意の形状で培養し、ハンドリングする技術を確立していた。機能をもつ神経ネットワークを構築するためには、神経細胞のプライマリーセルを用いてネットワークを構築する必要がある。平成26年度は、ラットの海馬由来から神経細胞を単離し、マイクロプレート上で培養する条件を検討した。これにより、マイクロプレート上で神経細胞のプライマリーセルを培養することに成功した。また、免疫染色により、マイクロプレートの形状に基づいて、神経細胞が軸索と樹状突起に分化したことが示唆された。 (2)のタスクフォース研究については、複雑な形状の壁面に細胞シートを転写を目的としたデバイスの開発を行った。重篤な中耳手術の際、患部は耳介の後部に穴をあけて手術される。この後部にあけられた人工的な穴は中耳の環境を損なうため、中耳炎の再発を引き起こす。切削穴の表面に粘膜細胞由来の細胞シートを移植することで、再発が防がれるが、穴の形状が複雑であるため、移植が難しかった。そこで、当グループは、3D プリンターを用いて型をつくり、エラストマーの一種である EcoFlex をかためることで、穴の壁面にシートを転写することができるデバイスを開発した。プラスチックチューブと牛乳膜をモデルとして転写実験を行ったところ、容易にチューブ内壁に牛乳膜を転写することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでマイクロピンセットによるハンドリングや細胞牽引力を利用した三次元折り畳みにより、マイクロプレートを用いて形態的な組織構築に成功している。さらに、形成した組織に機能を付加するためには、構築した各細胞の機能が発現する必要がある。これまで利用してきた培養細胞と異なり、神経細胞のプライマリーセルは機能をもつ軸索と樹状突起を有しており、構築した組織に機能を付加することに適している。まだ、構築した組織における機能を確認できていないが、マイクロプレート上での培養、およびマイクロプレートの形に応じた樹状突起と軸索の分化は成功しているため、研究は順調に進展しているといえる。 タスクフォース研究については、当初計画にない研究であり、平成26年度の11月に実施が決定した。細胞シートを用いた実験には至っていないものの、デバイスの設計は完了しており、また、牛乳膜を細胞シートのモデルとして、また、プラスチックチューブを中耳手術時にあける人工的な切削穴のモデルとした実験では、牛乳膜の転写に成功している。これより、本タスクフォース研究で求められている容易にシート構造を転写することが達成されていると考えられる。また、細胞シートの取り扱いに関しては、同じ新学術領域であるA03班大和グループと領域内連携をしており、細胞シートの取り扱いや結果については密に連携が行われているため、細胞シートを用いた実験環境が整っている。以上のことより、当初計画外のタスクフォース研究についても、基礎的な段階が達成されているため、当初計画以上に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロプレートによる任意の神経細胞ネットワーク構築では、今後、構築したネットワークの検証を行う予定である。平成26年度までにマイクロプレート上へのラット海馬由来の神経細胞のプライマリーセルの播種、プレート形状に基づいた樹状突起と軸索への分化、そしてマイクロピンセットによるハンドリング技術を確立している。そこで、平成27年度はマイクロピンセットによって任意の神経細胞ネットワークを構築する。構築した神経細胞ネットワークについては、免疫染色、およびカルシウムセンサータンパク質を用いることで、形態的・機能的にネットワークが構築されているかを検証することを予定している。 タスクフォース研究である中耳移植デバイスの開発については、今後は細胞シートを用いた実験を行う。平成26年度の研究で、すでにデバイスを作製する技術は確立しており、また、シート構造を転写することが可能であることは実証済みである。設備および制度の関係上、本新学術領域の期間中は臨床実験はできないものの、移植部のモデルをハイドロゲルによって構築し、その表面に細胞シートを転写し、評価を行う予定である。デバイスの評価は、細胞シートに覆われた患部モデルの表面を観察、被覆率を定量的に解析するだけでなく、転写された細胞の生存している割合を求める。生存率を求める際は、転写された細胞シートをトリプシン処理で消化し、Live/Dead assay 試薬を用いて蛍光観察を行うことで実施する予定である。 また、本領域研究でパリレンシートの造形、およびハンドリングや折り畳みを行う技術が確立されている。そこで、この技術の応用研究として、パリレンシートの折り畳みによる 三次元流路開発の実施を予定している。
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