研究概要 |
開始年度である平成23年度は三次元細胞システム構築に向けて細胞の足場材料の開発に着手した.申請設備であるプロセスリアクター(合成装置)の設計の期間中はデモ機によりバイオミネラルを結晶相がOCPとなる範囲の条件下で,合成の各種因子を詳細に検討して精密合成を試みた.その結果,設定した過飽和度により物理化学的に異なる性状(結晶サイズ,結晶性,溶解性)のミネラル結晶が得られることがわかった.結晶相としてHAとDCPDの(相図上で)隙間的に生成するOCP相を維持するだけでなく,ナノサイズからc軸方向へ長大に成長した結晶が得られることがわかった.また,足場材料構築のためマトリクスとなる酸性抽出のブタ皮膚コラーゲン由来のゼラチンの共存下で同様の検討を行い,共存の影響を確認した.追加配分により導入した真比重測定装置によりミネラル/マトリクス複合体の物性評価にも着手し,物理化学的パラメーターを増やし足場材料の確実な物性評価を行った.これらの合成バイオミネラルあるいはミネラル/マトリクス複合体は骨芽細胞様細胞の応答性を評価し,結晶性状と細胞応答性について検討している.一方,バイオミネラル結晶群が規定の細胞数を有する骨芽細胞の応答性を解析する2次元的相互作用解析デバイス設計に着手し,AO1班新井(史)と共同で試作デバイスを設計した.バイオミネラル結晶をデバイスの特定部位に集約する物理的方法の検討に注力し,基本的な設計が可能となった.また細胞回収方法と観察方法を詰め,実験に必要な消耗品を準備して,次年度に向けてデバイスの評価のための準備を行った.
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