研究領域 | 超高速バイオアセンブラ |
研究課題/領域番号 |
23106010
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 治 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60374948)
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研究分担者 |
穴田 貴久 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (30398466)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 石灰化 / 骨 / 骨芽細胞 / 細胞システム |
研究概要 |
平成25年度は、人工合成ミネラルが硬組織関連細胞の活性に及ぼす影響を検討した.また,各種マトリクス材料にミネラル結晶を分散して骨芽細胞分化に適する足場材料の条件を検討した.また,平成23年度から継続していたミネラル結晶と細胞との相互作用を解析する培養デバイスにpHを検出できるpHセンサーを組み込み,ミネラル結晶周囲の環境を測定できる定量的な解析デバイスの基本型を設計・試作した.また,三次元細胞塊への酸素供給が可能な培養デバイスを用いて,硬組織関連細胞の細胞塊の活性を測定し,評価を行った. 1) 人工合成ミネラル(OCP)顆粒を培養皿にコーティングし,その上に軟骨前駆細胞(セルライン),ラット歯髄由来細胞を播種して,それぞれ細胞の増殖と分化を調べた.ミネラル結晶は軟骨前駆細胞には分化抑制的に作用,歯髄由来細胞には象牙芽細胞様細胞への分化促進的に作用することがわかった. 2) A01計画班と連携して,合成ミネラルと細胞の相互作用解析デバイスに結晶周囲環境のpH測定機能を付加した.すなわち,蛍光検出pHセンサーをビーズ材料に組み込み,結晶と細胞間に配列して結晶の化学反応をpHの変化としてモニタリングするためのデバイスの基本型を作製した.結晶からの距離依存的にpH値に差異が見出され,結晶と細胞間の微小環境を観察できるようにした. 3) 平成25年度に作製した,サイズの均一な細胞塊(スフェロイド)を簡便に形成させることができ,かつ酸素を安定供給することができる培養デバイスを用い,軟骨前駆細胞(セルライン)の細胞塊形成への効果を検討した.通常の単層培養と比較して,軟骨細胞への分化が有意に促進されることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は人工合成ミネラルが細胞の活性向上を示す硬組織由来細胞の細胞種について幅広く検索し,細胞によっては分化抑制に働くことを解明できた.また,細胞と結晶の相互作用デバイスの測定機能を向上させるべく,pHを微小な部位で測定できるための基本設計と試作を行い,結晶近傍の微小なpH変化がモニタリングできるようになった.さらに,三次元細胞塊作製デバイスの適用拡大を図るため硬組織由来細胞の細胞種について結晶では分化抑制に作用した軟骨前駆細胞の分化がスフェロイド化によって促進的に作用することを明らかにできた.以上から,計画に準じた進め方に沿っていること、また、ほぼ予想した結果が得られていることから概ね順調に進展していると評価できた.
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今後の研究の推進方策 |
人工ミネラル結晶の硬組織由来細胞の応答性を明らにできつつあることから,さらに血管内皮細胞など,骨組織に関連の深い細胞の応答性を明かにしていく.探索の追加として,結晶がやはり硬組織関連細胞であるエナメル芽細胞様細胞にも有効かどうか検討を拡大する.また,結晶が三次元的に最適に配列できるマトリクスと配置方法を十分に検討していき,厚みのある足場の内部での細胞応答性を遺伝子レベルで解明していく.結晶と細胞の相互作用解析デバイスにより,結晶が誘導する詳細な環境条件を調べる.また,班間および公募班との連携を進め,班員が持つ細胞の三次元化技術を活用して,有効性を比較検討する.さらに,連携研究を通じて,血管構造を有する細胞/結晶/足場の構築と評価に着手する.In vitroで細胞の活性が検証できた系についてはin vivo評価により生体内で機能が獲得できるか検討していく.In vivoにおける組織の機能発現がin vitroでの個々の組織構築のどのパラメーターに強く関連するか明らかにしていく.
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