研究領域 | ナノメディシン分子科学 |
研究課題/領域番号 |
23107002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樋口 秀男 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90165093)
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研究分担者 |
茅 元司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00422098)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | マウス / 非侵襲 / イメージング / ナノメートル |
研究概要 |
非侵襲in vivoがん細胞・白血球のイメージング: これまでのin vivoイメージングでは,腫瘍部を切開して、癌腫瘍表面近くを観察できた。しかしながら、切開をすると、出血や免疫細胞の活性化などが起こり、生きたままの姿を観察する事は困難である。そこで、非侵襲で観察できる装置システムの改良と観察法の工夫をおこなった。明るくするため、倍率を下げ、レーザーの集光度を上げた。血量が見えるように、青い光の透過像を得られるようにした。観察法として、約200μmの厚さしかない耳をえらび、蛍光を発する毛の脱毛をした。がん細胞をラベルするためにHerceptin-量子ドット複合体を尾静脈注射た。細胞膜に結合した量子ドットの観察に成功した。また、白血球の中でも運動能が高い好中球やマクロファージに結合した多粒子化量子ドットを結合することで、血管中の好中球をより鮮明に量子ドットを観察する事ができた。また、耳に刺激剤を塗りクロファージを誘発したところ、貪食した量子ドットの詰まった小胞の運動を観察する事ができ、小胞の位置を50nm精度で追跡することができた。また、細胞運動を観察でき、仮足が急速に伸びたのち、細胞体が仮足の方法に動き出した。好中球が生体内を動くメカニズムが解ってきた。 耳にがん腫瘍を形成し非侵襲下でがん細胞を観察を試みました。耳殻に乳がん組織を形成する実験モデル(マウス)の開発を試みたところ、耳殻での腫瘍形成に成功しました。さらに、このがんモデルマウスを用い、乳がん細胞に特異的に付着するように処理した蛍光量子ドット(QD)と当研究室で開発した共焦点顕微鏡を用い、リアルタイムで、かつ非侵襲下で乳がん細胞膜上のQDを観察することに成功しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題では、マウス内好中球やがん細胞を侵襲的に観察を行う予定であった。しかし、研究の進行中に、耳が薄くて、もしかして、傷をつけることなく非侵襲的に好中球を観察できるのではないかとのアイデアが浮かび、世界で誰も成功していない非侵襲的に好中球をイメージングすることに計画を変えた。したがって、より新しい方法で、非侵襲であること以外は研究計画にそった研究を進めることができた。これは、計画では予想できなかった大きな進展である。 好中球内の細胞膜に結合した量子ドットが小胞内に大量に入るっといった新しい現象を見つけることができたので、位置精度を50nmまで高めることができた。この精度は、非侵襲であることを考えると、非常に良い精度が得られたことになる。今後は、装置のノイズを下げるなのどを行えば、この値より数倍高い精度が得られると予想している。 さらに、がん細胞の非侵襲イメージングにもチャレンジして、おぼろげながらがん細胞が見えてきた。これらは、研究がおおむね順調に進んでいることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では、侵襲下のマウスを観察する予定であったが、我々は、非侵襲的に好中球を観察することに世界で初めて成功した。したがって、今後は、侵襲の代わりに非侵襲イメージングにおいいて、研究計画にあった内容を行うことにとする。 これまでに我々が開発した非侵襲in vivo観察技術を用いることで、マウス耳介内において、活性化した好中球内部の小胞輸送速度には、かなり早いものがすでに観察されたので、速度を正確に測定する必要がある。この高速に動く小胞をより多く見つけるために、QDを内包した明るい小胞を持つ、活性条件の良い好中球を精製する手法を編み出す。その速度が、これまでに得られた速度より早い場合は、早くなる理由を説明するモデルを構築する。 この輸送速度が、精製した好中球でも得られるか否かを測定するために、精製された好中球に微小管重合阻害剤であるノコダゾールを作用させて、輸送速度を測定する。さらに、アクチンのモータータンパク質であるmyosin IIの阻害剤であるblebbistatinや、myosin IIの上流で活性制御を行っているROCKの阻害剤であるY-27632を作用させた際にも速度を測定する。 開発した装置を用いて、マウス内がん細胞の非侵襲in vivoイメージングを行うた。そのために、がん細胞をマウスに埋め込んだ異種移植が耳介内で行えるか検討をする。移植を行う細胞として、KPL4-EB1-GFP, U87MG, MDA-MB-231 (WT), MDA-MB-231-GFP-tub の4株の他にMDA-MB-231-EB1-GFPを加え、計5株を選び接種細胞数と腫瘍のできた率の測定をする。耳介内にがん組織作製し、スピンディスクタイプの共焦点顕微鏡により非侵襲下で観察を行つ。これには、GFP発現細胞のGFPを利用して蛍光を発している細胞をとらえる。
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