研究領域 | ナノメディシン分子科学 |
研究課題/領域番号 |
23107002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樋口 秀男 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90165093)
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研究分担者 |
茅 元司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00422098)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | がん細胞 / in vivo / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
がん組織・細胞の非侵襲in vivoイメージングに関する現在作成中の論文に追加するデータを得るために2つの実験を行った.1つは,MDA-MB-231細胞のGFP-tub.とWild Typeを9:1で混合し,がん組織の蛍光タンパクのバックグラウンドを抑えin vivoイメージング行い,これまで以上に鮮明ながん細胞像を得る研究を行った。2つ目はヌードマウスの耳介の腫瘍形成率が低いが,例数が少なくSKIDマウスとの間に有意差がみられないことから,例数を増やす実験を行った.MDA-MB-231細胞のGFP-tubとWild Typeを9:1で混合し,マウス耳介に接種した結果背景光の低くコントラストの高い細胞イメージングができた.また,ヌードマウスの耳介の腫瘍形成率についての実験では,これまで4×10^6cellsの接種細胞数では腫瘍の形成がみられなかったが,5.0×10^6cells以上の細胞を接種すると,腫瘍が形成することが新たに明らかとなった. 脳の悪性腫瘍からライン化された細胞(Brain tumor stem cells,BTSCs) の紫外線に対する耐性を調べた. がん幹細胞と幹細胞ではない腫瘍細胞U87に紫外線(280nm)10分照射した後に,幹細胞に結合した量子ドット‐EGFRの細胞膜上の運動のトラッキングを行た.その結果,がん幹細胞のEGFRの膜上の運動は,照射前とほとんど変化しなかった.それに対して,幹細胞ではないU87では,膜上の運動は大きく阻害された(遅くなった).これらのことから,がん幹細胞が,紫外線に対する耐性があること明らかとなった. Par1ー量子ドットを用いて細胞内エンドサイトーシスの3次元追跡を行った結果、細胞内に入ったり出たりする不思議な現象が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん細胞のマウス内非侵襲イメージングの実験結果がすべて出そろったので、27年度は論文執筆を重点的に行うことができる。 今年度新たに始めた幹細胞を選択的に除去を行う研究も順調に進んでいる。 また、がん細胞の発現に重要なPar1がどのように細胞内に取り込まれているのかを3次元的に観察する装置は完成し、いくつかの追跡データーを得ることができた。これは、ほぼ予想の進行速度である。
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今後の研究の推進方策 |
マウス内がん細胞に関する研究:GFPを発現したがん細胞やマクロファージを非侵襲条件下にて蛍光観察を行う.腫瘍の大きさは数ミリメートルと顕微鏡の視野0.1mmよりも格段に大きい.したがって,視野を機械的に移動することで,1mm四方程度の範囲の腫瘍内細胞のイメージングを行う.この細胞の蛍光強度は低いと予想されるので,画像解析によって,ノイズを減弱することでイメージングを行う.マクロファージは耳表面に埋め込み細胞運動を観察する。 iPS細胞の作製とイメージング:ヒトiPS細胞をディシュ上で心筋に分化を試みる.さらにこの心筋には,Transfection 溶液を用いて, mCherry-Tubulinをトランスフェクションを行う.出来上がった,心筋をマウスの耳に打ち,心筋が機能するか否か,あるいはがん化が引き起こされてい来ないかのイメージングを行う. マウス内筋肉の研究:筋肉心筋細胞のz線とアクチン線維先端を蛍光染色するために,α‐アクチニンにGFPあるいはmcherryを結合する.これを,生筋に注射して,電圧をかけて細胞内に導入する.蛍光タンパク質発現後,単一筋肉細胞を切り出して,蛍光の局在を観察する.電気刺激を行ったとき,力発生とともに蛍光の局在が変化するかを観察・解析する.解析に際しては,α‐アクチニンの蛍光をガウス関数で近似して,中心位置を求めることで精度を上げる.
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