研究領域 | ナノメディシン分子科学 |
研究課題/領域番号 |
23107003
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
福田 紀男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (30301534)
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研究分担者 |
栗原 敏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90057026)
橋本 和弘 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30172860)
本郷 賢一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00256447)
草刈 洋一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (80338889)
小比類巻 生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40548905)
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キーワード | 生理学 / 生物物理 / 細胞・組織 / 生体分子 / バイオイメージング |
研究概要 |
H.23年度は心疾患病態のナノ解析に向けた基盤技術の構築を行った。以下に詳細を記す。 1)摘出心臓を用いた実験 遺伝子発現技術を駆使することによって、心臓において単一サルコメアの動きを共焦点下に観察した(カメラ速度:30fps)。すなわち、α-actinin-GFP発現組み換えアデノウイルスベクター(ADV)を作製し、これを麻酔・開胸したマウスの心臓に投与した。ADV投与2~3日後、心臓を摘出すると、約20%の心筋細胞において横紋構造が観察された。静止時のサルコメア長は~2.00μmであり、この値は他のグループが異なる実験系を使って報告している値漫矛盾しなかった。なお、単一サルコメアの長さの測定精度は10nmである。また、自動拍動中のマウス摘出心臓のサルコメア長の測定に成功し、収縮、拡張時にそれぞれ~1.7および~2.2μmであった(細胞外Ca濃度:1mM)。 2)in vivo心臓を用いた実験 上で述べたGFP発現によるサルコメアイメージングを発展させ、高速でのサルコメアイメージング(約100fPs)とともに生理学的データ(心電図・心内圧)を並行して記録した。すなわち、心臓においてα-Actinin-GFPを発現したマウスを麻酔下で開胸し、心尖部より心臓カテーテルを左心室内へ挿入、観察中継続して心内圧を測定した。また、心電図も同時に取得した。その結果、心拍1回分の各単一サルコメア長の経時変化を最大0.5秒まで解析することに成功した。平均サルコメア長は、伸展相で~1.99μm、収縮相では~1.71μmであった。単一サルコメアの長さの測定精度は10nmである。また,同一細胞においても単一サルコメア長の間には最大で300nmもの違いがあり、生体内サルコメア長には不均一性があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、動きをともなう小動物個体の心臓から心筋細胞内局所の生体分子の挙動やイオン動態をnm精度で抽出できる顕微システムを開発し、これを基盤として生体分子の集団がどのようにして心臓拍動のリズム調節機構を生み出しているかを解明する。その上で、各心疾患病態の分子メカニズムを解明する。H.23年度、in vivo心臓において10nmの精度でサルコメア長を計測すること、さらに、心電図や心内圧との同時計測に成功した。これらは、本研究を完遂するためにはなくてはならない基盤技術である。よって、現在までのところ、本研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
H.23年度に構築したシステムを強力に発展させ、サルコメア長のみならず、in vivo心臓における心筋細胞の膜電位情報や細胞内Ca濃度を計測する。現在の位置分解能は10nmであるが、装置系に改良を加え、2-3nmの精度を目指す。 現在、心臓の動きに合わせて対物レンズを動かすフィードバックシステムを構築中である。その上で、この顕微システムを各心疾患動物モデルに応用する。我々は、制御タンパク質のトロポニンTに変異(K210)をノックインした拡張型心筋症マウスを有しており、まずはこのモデル動物に応用する。なお、細胞内Ca濃度は、GCaMP2(FRETを利用)をアデノウイルスベクターに組み込み、これをin vivo心臓のサルコメアのZ線に発現させることによって行う。膜電位情報の抽出は、蛍光物質を用いることによって行う。
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