研究領域 | ナノメディシン分子科学 |
研究課題/領域番号 |
23107004
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
由井 伸彦 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (70182665)
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研究分担者 |
徐 知勲 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (20611544)
金野 智浩 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80371706)
田村 篤志 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (80631150)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 超分子 / ポリロタキサン / シクロデキストリン / siRNA / 酵素 |
研究概要 |
本研究では、シクロデキストリンの空洞部に線状高分子が貫通した超分子ポリロタキサン(PRX)を用いた細胞内分子反応解析、および治療技術の確立を目的としている。前年度まで細胞内分解性結合を有するPRXを設計し、核酸やタンパク質の細胞内導入に関して検討を行ってきた。今年度は、細胞内分解性PRXが細胞内で分解し多数のCDを放出する点に着目し、ライソゾーム病の一つであるNiemann-Pick病C型治療への応用を検討した。本疾患はNPC1の変異により、リソソーム内にコレステロールや脂質の異常蓄積が起こる疾患であり、進行性の神経後退を引き起こす致死的疾患であるが、現在有効な治療法が確立されていない。 分解性PRX、非分解性PRX、および現在臨床応用が進められているHP-β-CDをβ-CD濃度0.1 mMでNPC病患者由来繊維芽細胞(NPC細胞)と24時間接触させ、コレステロールの局在をFilipin染色により観察した。分解性PRXで処理したNPC細胞はFilipinに由来する蛍光強度が未処理NPC1細胞と比較して低下し、正常細胞と同程度までコレステロール蓄積が改善さていることが明らかとなった。一方、HP-β-CDで処理したNPC細胞は,本実験濃度では大きな変化は認められなかった。分解性PRXのコレステロール蓄積改善作用をより明らかとするため、細胞内コレステロール蓄積量の定量を行なった。コレステロール蓄積量に対する用量反応曲線より求めたHP-β-CDの半数効果濃度(EC50)は2.6 mMであったのに対し、分解性PRXの半数効果濃度はHP-β-CDの約1/100である0.024 mMであった。一方、非分解性PRXでは10 mMでも有意なコレステロール量の変化が認められなかったことより、細胞内環境におけるPRXの分解とβ-CDの放出がコレステロール蓄積改善に非常に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの知見に立脚し、Niemann-Pick病C型に対する治療薬として分解性ポリロタキサンの利用を検討し、現在臨床応用が進められているシクロデキストリン誘導体よりもはるかに優れた作用を示すことを明らかとした。本研究課題の最終目標はポリロタキサンの治療技術への応用であることから、このような希少難治性疾患に対しポリロタキサンが非常に有効に作用することを明らかとしたことは有望な結果だと考えている。以上の結果より、当初の計画通りに研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画として、Niemann-Pick病C型由来細胞からのコレステロール除去メカニズムを明らかとするとともに、より効果的なコレステロールの減少を達成するために、分解性結合種や修飾官能基を変化させることで分子設計の至適化を行う。また、前年度までin vitroの実験系で分解性PRXによる核酸、タンパク質デリバリーを推し進め、超分子骨格の効果を明らかとしてきた。本年度は、従来の直鎖状高分子との比較検討を行い、分子構造をパラメーターとして超分子構造の効果をより詳細に検討する。さらに応用という観点では、疾患モデル動物に対するin vivoでの治療効果を検討する。
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