研究領域 | ナノメディシン分子科学 |
研究課題/領域番号 |
23107005
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石原 一彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (90193341)
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キーワード | ナノメディシン / 細胞環境 / 分子反応 / 反応パラメーター |
研究概要 |
本研究は、「細胞を対象とした細胞外からの物質輸送、細胞内での移動を、細胞内の特殊環境を考慮しながら追跡し、その速度定数を明確にする細胞内分子輸送プローブを創製する。さらに、このプローブを利用して未解明な点の多い、細胞膜からの分子の取り込み過程を、細胞膜への分配、細胞膜中での拡散、細胞膜から細胞質内への脱離に分けて定量的に考察する。ナノ粒子を溶媒蒸発法にて作製するために、水中で安定な会合体を形成し、その内部に疎水性の核ポリマー溶液を可溶化できる両親媒性のMPCポリマーを合成した。核の安定性を高め、量子ドットを担持するためにも疎水性のアルキルメタクリレート中心に検討した。さらに、バイオ分子を温和な条件で反応させ、ナノ粒子表面に結合させるために活性エステル基を導入した。得られたMPCポリマーを溶解した水溶液中に、ポリ乳酸の有機溶媒溶液を滴下して、超音波照射による乳化分散後、加熱、減圧することでMPCポリマー被覆型ナノ粒子を作製した。このプロセスを、MPCポリマーの種類、濃度などをパラメーターとして変化させて、粒径8-250nmの範囲で精密に制御する条件を決定した。表面に結合させる生理活性分子についても検討し、細胞膜を透過させることのできるオリゴペプチドの構造、結合密度についての情報を得た。細胞膜を透過させるためのオリゴペプチド構造としては、グリシン(G)は全く不活性であり、カチオン性のアルギニン(R)が効果的であることがわかった。さらにRがGに対して80モル%以上必要であるとともに、密度の効果についても全体の80%がオリゴアルギニンであることが必要であった。一方、これらのナノ粒子は細胞に対して影響することなく、細胞は通常の増殖挙動を示した。細胞内の粒子の拡散性については、共同研究を開始することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内包する量子ドットのスペックを変え、長波長側に蛍光を示す粒子系の大きな量子ドットを利用すると、予備検討してきた粒子調製法が適用できないことが判明した。この原因を追求した結果、粒子作成の際の分散性に依存することが明確となった。この点に関して、溶液濃度、ポリマー分子量の効果を検討した結果、解決策を見いだすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
得られた量子ドット内包ナノ粒子を、研究領域内の共同研究先に提供し、細胞内での拡散、局在化について詳細な検討を行う。一方で、観察する際に細胞が大きく移動して、顕微鏡の視野から外れる場合があるために、細胞の固定化方法についての検討も進める。これらの成果を、公募研究班を含め、広く提供できるようにすることで、領域研究を推進する。
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