研究領域 | ナノメディシン分子科学 |
研究課題/領域番号 |
23107006
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三宅 淳 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70344174)
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研究分担者 |
木原 隆典 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90436535)
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キーワード | 細胞内計測 / ナノプローブ / mRNA / 原子間力顕微鏡 / 力学特性 / 分子拡散 / 物理環境 |
研究概要 |
疾病を分子反応の統合として理解・応用する技術系の構築には、細胞を反応場とした分子反応の一義的理解と普遍的考察が欠かせない。特に細胞内における分子反応を理解・考察するためには、細胞内での高分子物理環境を明らかにし、その環境下での分子反応を研究することが必要となる。本研究は、細胞内環境下における分子反応の詳細な解析を可能にする極微小探針の創製を行い、それを用いて直接細胞内における分子反応、特にmRNA等の巨大分子の定量解析を目指す。 H23年度は以下の研究を行った。 細胞の内在性mRNAを直接計測するため、直径400nm、長さ10umの極微小探針表面に高感度・高特異性な核酸プローブであるモレキュラービーコンを修飾し、mRNAに対するナノプローブの創製を行った。作成したナノプローブの検出限界は溶液系で1nMであった。作成したナノプローブを細胞に挿入したところ、ターゲット細胞内のみで特異的にナノプローブの応答を確認することに成功した。ターゲットとしたヒトGAPDH mRNAは1細胞内に1000コピー、3nM程度の濃度で存在すると考えられるが、作製したナノプローブの蛍光輝度値からの見かけの濃度も3nMであった。一方で、ナノプローブの応答速度から見積もられるターゲット分子の見かけの濃度はそれより10^3程度高く、細胞内におけるmRNAの応答機構が溶液系と異なる可能性が示唆された。 細胞の力学特性は、細胞内物理環境を推察する一つの指標となりうる。しかし細胞の形態が多様であることから、原子間力顕微鏡による力学特性解析のみからその物理環境を推察することは難しい。そこで、細胞の形態から生じる非対称性をなくした細胞の力学特性計測システムを構築した。 細胞による組織形成過程を利用し、その際に細胞の周辺物理環境がどのように変化しうるのかを細胞外空間中の分子拡散解析を行うことで明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度は初年度であることから、mRNA検出のための研究の立ち上げおよび新規に導入した分子拡散解析を用いた分子動態解析の立ち上げを行い、これらを順調に進めることができた。そのため、当初予定通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方法として、細胞内環境下におけるmRNA等の高分子の動態・反応を実際の細胞内環境下で創製したナノプローブを用いて解析すると共に、ナノプローブのさらなる改良を行う。また、それと同時に細胞内高分子環境を理解できるような、コンピューターシミュレーション等による可視化解析を実験から得られる物理解析の結果を利用して行うことで、細胞内物理環境の全貌を見出していく予定である。 一方で、当初予定していた博士研究員がいまだ決まっていないことから、早い段階で博士研究員の選定・雇用を行うことで、さらなる研究の進展を目指す。
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