研究領域 | ナノメディシン分子科学 |
研究課題/領域番号 |
23107006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三宅 淳 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70344174)
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研究分担者 |
新岡 宏彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70552074)
木原 隆典 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (90436535)
田中 信行 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00724692)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞内計測 / 原子間力顕微鏡 / 力学特性 / 細胞骨格 / バイオイメージング / ナノプローブ / 電子顕微鏡 / カソードルミネッセンス |
研究実績の概要 |
疾病を分子反応の統合として理解・応用する技術系の構築には、細胞を反応場とした分子反応の一義的理解と普遍的考察が欠かせない。特に細胞内における分子反応を理解・考察するためには、細胞内での高分子物理環境を明らかにし、その環境下での分子反応を研究することが必要となる。 H26年度は以下の研究を行った。 1. 細胞内における力学構造体としての細胞骨格の解析:細胞の力学特性は主として細胞骨格の形成に依存しており、特に細胞の裏打ち構造であるアクチンフィラメントは多用な構造体を形成することで細胞の力学特性を支配している。様々なコーティングがなされた基板上やゲル上で細胞を培養し、AFMを用いて細胞の硬さを計測した結果、それぞれで細胞の硬さが異なる事が明らかになった。さらに、ゲル中や細胞組織内部の細胞の細胞膜をレーザーによって穿孔した後、細胞膜の修復過程を観察することを通して細胞の硬さを計測する手法を開発した。 2. CRP2によるアクチン繊維の構造制御:平滑筋細胞に特異的に発現する転写因子CRP2 (cysteine and glycine rich protein 2)は、アクチン繊維に結合することでアクチン繊維の機能に作用を及ぼすと考えられている。そこで、CRP2によってアクチン繊維の物理的な特性がどのように変化し、それによって細胞内の物理環境どのような影響を受けるか検討を行った。結果、CRP2およびCRPタンパク質ファミリーは筋細胞内でアクチン繊維/筋繊維に結合し、繊維のバンドル化や安定化に寄与することで筋細胞内の物理的な環境に影響を及ぼすことを示唆するデータを得た。 3. 新規高分解能イメージング手法の開発:電子線照射によって発光を呈するナノ粒子(Y2O3:Tm(青), Y2O3:Tb(緑), Y2O3(赤))を細胞へ導入し、電子顕微鏡を用いて細胞の高空間分解能カラーイメージングに成功した。更に、電子線だけでなく近赤外光励起によっても発光を呈するナノ粒子の作製にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度も去年度に引き続きAFMを用いた細胞の力学構造体の定量解析を行なった。特に今までとは異なり、細胞外の環境が細胞に与える影響をAFMにより解析する実験を行なった。さらに、レーザーを用いて細胞の硬さを計測する手法を提案し、実践した。本手法によりAFMの針が届かないゲルや組織中の細胞の硬さ計測が可能になるものと思われる。 また、CRP2およびCRPタンパク質ファミリーは筋細胞内でアクチン繊維/筋繊維に結合し、繊維のバンドル化や安定化に寄与することで筋細胞内の物理的な環境に影響を及ぼすことを示唆した。 さらに、電子線照射によって発光を呈するナノ粒子を細胞に導入し、電子顕微鏡を用いて細胞の高空間分解能カラーイメージングに成功した。 以上のことから、全体として概ね順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、個々の技術の発展に注力していたが、最終年度に向けてこれらの技術を統合し、AFMやレーザーによる力学計測、CRP2によるアクチン繊維の構造制御、高空間分解能イメージング技術を駆使して、細胞外環境が細胞の硬さや細胞内部の分子動態に与える影響について研究を行う。特に、ゲル中や組織内の細胞のような、平面培養された細胞とは異なる三次元的な力学場に存在する細胞を解析する事に注力する。
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