研究領域 | ナノメディシン分子科学 |
研究課題/領域番号 |
23107007
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
丸山 厚 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (40190566)
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研究分担者 |
嶋田 直彦 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10423972)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カチオン性共重合体 / リポソーム / 生体膜 / ベシクル-シート転移 / 薬物送達 / デオキシリボザイム / 遺伝子解析 |
研究実績の概要 |
インフルエンザウイルス表面に存在するヘマグルチニンのN末端部分を模倣したE5ペプチド (GLFEAIAEFIEGGWEGLIEG) は酸性条件下でグルタミン酸残基がプロトン化することにより分子内の静電反発が減少し、ランダムコイルからα-ヘリックスへ構造転移する。その結果、両親媒性となり、膜破壊能を発現する。E5は細胞内デリバリーの材料としての応用が期待されているが、その活性の低さや溶解性が低いことによる取扱いの難しさを解決することが課題である。これまでに、カチオン性くし型共重合体のカチオン性の主鎖がE5分子内の静電反発を抑制することによりα-へリックスの形成を誘起し、親水性の側鎖がE5ペプチドの疎水性を緩和し溶解性を保持し、ペプチドの活性を顕著に向上できることを明らかにした。本年度は、ペプチドの性状と膜破壊活性との相関を明らかにすべく、E5ペプチド類似体を種々調製し、評価した。その結果、ペプチドの両親媒性、ヘリックス形成性および疎水性度が膜破壊活性に影響することが明らかになった。また、共重合体は、全てのペプチドに対して、溶存性を保持しつつ構造転移を誘起する事が明らかになった。共重合体は、核酸検出のためのデオキシリボザイム活性も高めることも見出され、細胞内遺伝子の解析および調節にも有益と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞の遺伝子情報の検出およびその制御には、細胞内に効率良く核酸プローブや核酸医薬を送達する必要がある。そのために、種々の膜破壊性化合物が評価されているが、未だ充分なものはない。今回、くし型共重合体が、膜破壊性ペプチドの機能を顕著に高めると共にその機能をOnーOff 制御出来ることを見出し、新しい細胞内デリバリーツールとして有用である事が示された。さらに、共重合体は、遺伝子解析プローブや核酸酵素の機能を向上させることも見出され、細胞内遺伝子解析とその調節の一連の過程で、有用な特性を発現することが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
1,細胞内送達手法の検討 両親媒性ペプチドが細胞膜融合・ 不安定化する活性をもつことが知られているが、その機能は細胞内デリバリーに充分ではない。すでに、ポリイオン主鎖に親水性の側鎖を配したくし型共重 合体を調製しペプチドの両親媒性構造の安定化と溶存安定化を計れることを見出した。本年度は、細胞膜に対する破壊活性を、細胞からのLDH放出によ り評価する。 2,核酸プローブの評価 既に核酸鎖交換(SER)反応が、DNAのみならずRNAを高い配列選択性で検出する上でも有用である事を見出した。そこで、細胞内RNAに対するSERプローブの反応性を検討する。具体的には、固定化細胞に対し、SERプローブを導入し、蛍光によりその結合を解析する。 3,核酸酵素型プローブの評価 既に核酸酵素の反応性をカチオン性高分子により顕著に高められる事を見出している。そこで、固定化細胞内のRNAの検出を、くし型共重合体とDNA酵素を組み合わせたシステムとして構築することを目指す。
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