研究実績の概要 |
1.細胞膜に混在する分子が細胞間接着へ及ぼす影響の検討 支持脂質二分子膜へ単鎖DNA-ポリエチレングリコール-脂質複合体(ssDNA-PEG-lipid)と共にPEG-lipidを導入し,膜分子が混在する細胞膜環境を模倣した系を構築した。PEG-lipidのPEG分子量が大きいほど,またその導入割合が高いほど,DNA相補対形成を介した細胞の接着が阻害もしくは遅延された。一方,いずれの条件でも細胞が接着した領域にssDNA-PEG-lipidが集積した。このことから,膜混在分子は細胞間接着の初期形成に影響するものの,接着が生じるとその面から排除されることで接着が安定化されることが示唆された。 2.塩基長が細胞間接着に及ぼす影響の検討 6, 10, 21塩基のssDNA-PEG-lipidを合成した。ssDNA-PEG-lipidで修飾した細胞へ相補ssDNA’を結合後に温度上昇させたところ,液中における相補対形成と同様,塩基長が短いほど低温で相補ssDNA’の解離が見られた。次に細胞間接着の温度依存性を調べたところ,Tm以上でも細胞間接着は誘導された。これは,細胞接着面にssDNA-PEG-lipidが集積し,多価効果により相互作用パラメータが増強されたためと考えられた。 3.細胞表面へのタンパク質修飾法の開発 遺伝子組み換え技術により,HisタグまたはSNAPタグを有するタンパク質を合成した。また,それぞれのリガンドを有するligand-PEG-lipidを合成した。細胞表面をligand-PEG-lipidで修飾することで,対応するタグ配列を持つタンパクを固定化することができた。さらに,この手法を用いて細胞間接着を担う膜タンパク質であるE-cadherinの細胞外ドメインを固定化したところ,異種細胞からなる細胞凝集体の構造制御に成功した。
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