本研究では、独自の生体ナノイメージング技術を発展させ、この技術をベースに、(1)リンパ行性転移メカニズム解明、(2)リンパ節内転移がん細胞の超高感度検出法開発、(3)がん転移抑制分子送達システムの創製を目的としている。 本年度は、イメージング装置、蛍光材料、生体操作手技など様々な視点から、定量的なin vivo分子イメージング法の開発を行った。近赤外波長域で高いS/N比の蛍光信号検出を目指し、光学的な改良を行った結果、プローブとなる蛍光ナノ粒子を、従来よりも高感度・高精度で可視化できる見込みが得られた。 蛍光体の耐光性を強化するために、蛍光ナノ粒子のシリカコーティングを行った。シリカコーティングでは、TEOSを材料として、反応温度・時間・濃度などの諸条件を考慮し、均一なシリカ層を複数種作製することに成功した。シリカコート蛍光ナノ粒子を前枝皮下に注入し、体内動態を検討したところ、注入部に接続した腋窩リンパ節への移行性が観られた。リンパ節を摘出後、励起光下で組織内の蛍光ナノ粒子の耐光性を評価したところ、シリカ層によって蛍光ナノ粒子の耐光性が数倍に強化されていることが分かった。 生体ナノイメージングでは、生体操作手技の開発は重要である。この手技開発の中で、既存の概念を打破する血管新生メカニズムの解明に成功した。血管内皮増殖因子(VEGF)を蛍光ナノ粒子で標識し、外科操作の工夫を加えた虚血肢モデルマウスに注入し、VEGFに標識されるVEGF受容体の分布を観察した。その結果、血管新生に必要なVEGF受容体の分布はわずか3倍量で十分であり、これによって血管直線部からの分岐(血管新生)が持続的に誘導されていくことが分かった。これまではVEGF受容体が10-20倍に過剰発現することが新たな血管の構築に重要であると長年信じられてきた。本研究により、世界に先駆けて、新たな血管新生メカニズムの概念を構築することに成功した。
|