計画研究
VHL遺伝子は癌抑制遺伝子(tumor suppressor gene)として認識されており、遺伝的または体細胞的変異によってその遺伝的機能が消失し、腫瘍化がおこると考えられている。VHL遺伝子から翻訳されるVHL蛋白(pVHL)は主に、E3 ubiqutin ligase複合体としての機能を持ち、転写因子HIF(hypoxia-inducible factor)(低酸素誘導因子)の分解制御を行っている。低酸素状態において、pVHLによるHIFのユビキチン化と分解が抑制され、VEGF(VGEF: Vascular Endothelial Growth Factor)遺伝子の転写を促進する。Girdinは、VEGFを介した生体の血管新生(postnatal angiogenesis)にAkt依存的に関わっていることから、本研究では、低酸素下の状態でのGirdinの脳腫瘍幹細胞の幹細胞性の維持と、その役割を検討した。低酸素の状態で、Girdinの発現上昇が示された。腫瘍細胞における遺伝子変異やその進展の多様性が明らかとなった。ほとんどの腫瘍においてはある一連の変異をもったsubcloneが様々なセレクションをうけて生き残り増大する.それゆえ,悪性化・転移・再発はclonalに起こると考えられている。
2: おおむね順調に進展している
Girdinは、Aktの新基質として血管内皮細胞や、悪性腫瘍の細胞運動のキーファクターとして注目を浴びている。これまでの本研究の結果により、脳腫瘍幹細胞において分化を誘導させれば、Girdinの発現は低下し、逆にGirdin遺伝子の発現を抑制すると、脳腫瘍幹細胞はその幹細胞性を保てなくなることが示された。そして脳腫瘍幹細胞の細胞運動能、浸潤性、腫瘍形成能に深く関わっていることが示唆された。これを論文( Natsume A, et al. Oncogene)に公表できた。
今後の研究は、Girdinの上流因子AktはVEGFを介した血管新生に深く関与していることから、VHL病においても、Girdinが新たな治療法開発において注目されるべき因子であることは本研究から示唆されることであり、更なるGirdinの分子機構解明を進める予定である。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
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