研究領域 | 超低速ミュオン顕微鏡が拓く物質・生命・素粒子科学のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
23108004
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
門野 良典 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (10194870)
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研究分担者 |
西田 信彦 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (50126140)
橋詰 富博 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (70198662)
小嶋 健児 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (60302759)
幸田 章宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究機構講師 (10415044)
小池 洋二 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70134038)
井上 克也 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40265731)
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キーワード | 表面・界面 / ミュオンスピン回転 / 遷移金属化合物 / へテロ構造 |
研究概要 |
平成23年度は超低速μSR法確立の準備期間と位置づけ、A01班と協力して超低速ミュオン顕微鏡に組み込み可能なμSR測定器の設計を行った。また、μSR測定器の一部として超高真空ロードロック機構を備えた試料表面分析装置を設計・製作したが、これについては国外での試験研究の結果を踏まえ、当初の設計を変更したため、実施設計・製作はH24年度まで予算を繰り越して行った。また、(a)「薄膜で現れる銅酸化物の新しい超伝導相の解明」のテーマでは、先行研究としてPSIの低速μビームで電子ドープ系銅酸化物の非ドープ超伝導を調べ、バルク超伝導の強い証拠を得た(門野、小嶋、幸田担当)。さらに、同テーマで銅酸化物および鉄系超伝導体における不均一な電子状態の解明を目指してBi2210相およびKxFe2Se2-xTexの単結晶試料を育成するとともに、通常のμSRにより電子状態の不均一性を調べた(小池担当)。(b)「金属酸化物界面における二次元電子系の起源の解明」のテーマでは、パルスレーザー堆積法(PLD)の成長基板であるSrTiO3、TiO2などの金属酸化物薄膜について表面の原子構造と電子状態をその場STM/STSにより調べ、薄膜成長条件との相関を明らかにした(橋詰担当)。(c)「分子カイラル磁性体におけるメゾスコピックな新奇秩序の解明」のテーマでは、Nbを含むキラル磁性体の光学異性体を作り分けることに成功し、ローレンツ顕微鏡で磁区ドメインキンクの観察に成功した(井上担当)。(d)「異方的超伝導の境界効果/トポロジカル絶縁体表面金属状態の新奇物性」、および(e)「超伝導薄膜における量子渦糸の動的秩序の解明」のテーマでは、Bi2Sr2CaCu2Ox等、超低速μSR実験試料の表面その場観察に最適な小さなSTM素子の開発にめどをつけた。(西田担当)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KEKの分担者は、超低速ミュオンビーム実現に向けてA01班との協力のもと、実験装置の建設を着実に進めている。また、他の分担者も最初のビーム実験で目指すべき実験テーマの絞り込み、および各テーマに必要とされる実験条件を詳細に検討し、必要な条件を満たす試料の準備、およびその予備的な評価(バルク測定、低エネルギーミュオンによるミュオンスピン回転、あるいは通常のミュオンスピン回転による)が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、A01班と協力して超低速ミュオン顕微鏡に組み込み可能なμSR測定器の設計、データ解析手法の開発を行う。また、(a)「薄膜で現れる銅酸化物の新しい超伝導相の解明」のテーマでは引き続きPSIの低速μビームで電子ドープ系銅酸化物の非ドープ超伝導を調べる。さらに、同テーマで銅酸化物および鉄系超伝導体における不均一な電子状態の解明を目指して、通常のμSRにより電子状態の不均一性を調べる予備実験を行う。(b)「金属酸化物界面における擬二次元電子状態の新奇物性」のテーマでは、金属酸化物薄膜を作り、表面の原子構造と電子状態から薄膜成長条件との相関を明らかにするとともに、それらの表面に数層の薄膜を成長した異種間界面の原子構造をSTM/STSにより調べ、超低速μSR実験に備える。(c)「分子カイラル磁性体におけるメゾスコピックな新規新奇秩序の解明」のテーマでは、らせん周期の大きなサンプルおよびシングルドメイン構造の安定化の観点から、軌道スピン相互作用の大きな磁性イオンを含むカイラル磁性体、および室温でカイラル磁気構造を持つ可能性がある硫化モリブデン酸コバルト等を含むカイラル磁性体の設計、合成を進める。(d)「異方的超伝導の境界効果/トポロジカル絶縁体表面金属状態の新奇物性」、および(e)「超伝導薄膜における量子渦糸の動的秩序の解明」のテーマでは、ピエゾ試料回転台等を導入し、Bi2Sr2CaCu2Ox等、超低速μSR実験試料の表面その場観察に最適な小さなSTM素子を開発する。さらに、STMにより超伝導薄膜量子渦糸動的挙動を観測する時間分解能を3桁あげる方法を開発する。(Bi1-xSnx)2Te3単結晶を作製し、STM/STS法でトポロジカル絶縁体がバルクに実現できているかどうか調べる。
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