研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
23108101
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大利 徹 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (70264679)
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キーワード | 生合成 / ジテルペン / 糸状菌 / フシコクシン / パキシリン / ポリオキシン / フタロシン |
研究概要 |
1.フシコクシン生合成マシナリーの同定と再構築:フシコクシンA(FCA)は糸状菌が生産するジテルペン配糖体であり、その12位の水酸基を除去した誘導体が新規抗がん剤のリード化合物として期待されている。しかし、合成法による水酸基の除去は複雑で低収率であることから、本水酸基導入遺伝子の同定と破壊を最終目標にFC生合成マシナリーの全容解明を行った。ドラフトゲノム解析により同定した染色体上で離れて存在する2つのクラスターに見出した13の生合成遺伝子について解析を行った。合計5つのP450遺伝子Orf3、Orf5、Orf7、Orf10、Orf13に関しては、酵母を用いた異種発現、および相同組換えによる破壊実験により、ORF5、ORF3、ORF7、ORF10、ORF11が、各々8、16、9、12、19位を水酸化することを明らかにした。またORF10破壊株は、12位に水酸基の無い生合成中間体FCHのみを野生株のFCAと同程度生産した。FCHからは半合成で容易に抗がん剤に誘導体化可能であり当初の目的を達成した。さらにジオキシゲナーゼ(ORF2)、酸化還元酵素(ORF4)、糖転移(ORF6)、メチル基転移(ORF8)、およびプレニル基転移酵素(ORF11)に関しては、各々を組換え酵素として発現させ、生合成中間体を基質に用いたin vitroアッセイにより予想される活性を検出した。 2.インドールジテルペン生合成酵素の解析:パキシリンの生合成に関与すると推定される3つのプレニル転移酵素のcDNAを生産糸状菌から取得した。現在、これらの機能解析を行っている。 3.ポリオキシン・フタロシンの生合成マシナリーの同定と再構築:ヌクレオシド系抗生物質であるポリオキシンやメナキノン新規生合成経路中間体であるフタロシンが持つヌクレオシドの5'位の炭素-炭素結合生成メカニズムの解明を目的に解析を行った。ポリオキシン生合成の初発反応に関しては、UMPの3'位にフォスフォエノールピルビン酸が付加する反応が報告されている(詳細は未解明であるが、その後5'位に転位されると予想されている)。追試した結果、報告通りポリオキシン生合成遺伝子クラスター内のPolAが本反応を触媒した。現在、次の反応を触媒する酵素をクラスター内に探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フシコクシン生合成マシナリーの同定と再構築では、全13遺伝子のうち11遺伝子について機能解析を終えることが出来た。また、これら結果に基づき、半合成法で抗ガン化合物を合成する上で有用な生合成中間体(FCH)蓄積株の育種を達成した。インドールジテルペン生合成酵素の解析、およびポリオキシン・フタロシンの生合成マシナリーの同定と再構築に関しても計画通り順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
フシコクシン生合成マシナリーの同定と再構築では、より半合成に有利な3位水酸化化合物生産菌育種のため、3位に水酸基を持つFC類縁化合物であるブラシッシセンの生産菌から取得済の3位水酸化遺伝子を12位水酸化遺伝子破壊株へ導入し3位水酸化FCH生産菌の育種を試みる(生合成遺伝子の再構築)。 インドールジテルペン生合成酵素の解析、およびポリオキシン・フタロシンの生合成マシナリーの同定と再構築に関しては、当初の計画通り進める。
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