研究概要 |
濃度変調と構造変調が同期した新奇な長周期積層(LPSO)構造(シンクロ型LPSO構造)を示すMg合金Mg-TM-RE(Mg-TM-RE;TME=遷移金属,RE=希土類金属)系合金を主として取り上げ,最新の電子顕微鏡法による原子の直接観察と3次元アトムプローブ法,陽電子消滅ドップラー広がり法を組み合わせた新たな解析法により原子配列解析を行った.規則度の異なるMg-Al-RE系およびMg-Zn-RE系LPSO相のSTEM直接観察により,以下のことを明らかにした.Mg-Al-RE系LPSO相のSTEM直接観察では,REはAlとともに隣接4原子層に濃縮し,面内で長範囲の規則配列構造を取ることが明らかとなった.この濃縮4原子層を含む6原子層が構造ブロックとなり,その構造ブロックの積層構造として結晶構造が記述できる.構造ブロックの積層には焼鈍が不十分であれば特定の周期性なく,積層方向に一次元の積層不整を伴う規則-不規則(O-D:Order-Disorder)構造として記述できることが明らかとなった.Mg-Zn-RE系LPSO相のSTEM直接観察では,積層方向への化学的秩序の相関長が、対応する積層秩序に常に同期したシンクロ型LPSO構造であることが確認された.一連のLPSO構造は、同一の構造ユニットを用いて記述できる.第一原理計算による構造精密化では,18R型と14H型のLPSO初期構造モデルを構築し,第一原理計算を用いて原子座標の精密化を試みている.また,3次元アトムプローブ法に構造解析では,14H構造のZn,Y濃化層間隔である1.82nmとよく一致した約1.8nmの層間隔が観察され,予備的な評価により層内のZnとY原子の比が1:2に近いことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに同定されている数種のシンクロ型LPSO構造はいずれも母相MgのHCP構造のAB積層に周期的に積層欠陥を導入したものであり,この積層の変化はTM,RE原子が濃縮した隣接2原子層で起こるため,(1)TM,RE原子が濃縮した隣接2原子層の積層周期(その規則性と乱れ)と(2)濃縮2原子層内でのTMおよびRE原子配列を決定することを研究目的で最重要課題とした.いずれの項目もSTEM直接観察により完全に解明することが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
Mg-Al-RE系LPSO相は面内で長範囲の規則配列構造を取る規則-不規則(O-D:Order-Disorder)構造として,また,Mg-Zn-RE系LPSO相は積層方向への化学的秩序の相関長が、対応する積層秩序に常に同期したシンクロ型LPSO構造として記述できることを明らかにしたため,このような構造の相違を支配する因子の解明を今後推進したい.特筆すべき研究計画の変更や研究遂行上の問題点はない.
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