研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
23109002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
乾 晴行 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30213135)
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研究分担者 |
永井 康介 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (10302209)
阿部 英司 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70354222)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原子配列解析 / 透過電子顕微鏡法 / 3次元アトムプローブ法 / 陽電子消滅実験 / 弾性歪解析 / 規則化 / 積層 / シンクロ型LPSO構造 |
研究実績の概要 |
濃度変調と構造変調が同期した新奇な長周期積層(LPSO)構造(シンクロ型LPSO構造)を示すMg合金Mg-TM-RE(Mg-TM-RE; TM=遷移金属,RE=希土類金属)系合金を主として取り上げ,最新の電子顕微鏡法による原子の直接観察と3次元アトムプローブ法,陽電子消滅ドップラー広がり法を組み合わせた新たな解析法により原子配列解析を行った.規則度の異なるMg-Al-RE系およびMg-Zn-RE系LPSO相のSTEM直接観察により,以下のことを明らかにした.Mg-Al-RE系LPSO相のSTEM直接観察では,REはAlとともに隣接4原子層に濃縮し,面内で長範囲の規則配列構造を取るが, L12型Al6RE8原子クラスターの規則配列構造として記述できることが明らかとなった.濃縮4原子層を含む原子層を構造ブロックとした積層構造として結晶構造が記述でき,積層方向に一次元の積層不整を伴う規則-不規則(O-D: Order-Disorder)構造として記述できる.構造ブロックの原子層数(5~8)により,10H, 18R, 14H, 24Rなどの構造多形が形成され、それぞれにもっとも単純な積層構造及びその空間群を決めることができた.Mg-Zn-RE系LPSO相のSTEM直接観察では積層方向への化学的秩序の相関長が対応する積層秩序に常に同期したシンクロ型LPSO構造であることが確認された.一連のLPSO構造は、Mg-Al-RE系と同様の構造ユニットを用いて記述できるがL12型原子クラスターの面内配列の秩序が低く,クラスター中心の侵入型位置にMgが存在する可能性が.原子の直接観察および第一原理計算から明らかにされた.また,3次元アトムプローブ法では濃化層内におけるZnとY原子の比が14Hと18R構造で異なり,Yの濃度はほぼ同じものの,Znの濃度は14Hよりも18Rで低いことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに同定されている数種のシンクロ型LPSO構造はいずれも母相MgのHCP構造のAB積層に周期的に積層欠陥を導入したものであり,この積層の変化はTM, RE原子が濃縮した隣接2原子層で起こるため,(1) TM, RE原子が濃縮した隣接2原子層の積層周期(その規則性と乱れ)と(2) 濃縮2原子層内でのTMおよびRE原子配列を決定することを研究目的で最重要課題とした.いずれの項目も,STEM直接観察により完全に解明することが出来ている.(2) 濃縮2原子層内でのTMおよびRE原子配列については,Mg-Al-RE系LPSO相のSTEM直接観察から,濃縮は2原子層ではなく4原子層にあることを明らかにし,その単位としてL12型Al6RE8原子クラスターの存在が明らかにできた.これをもとに、Mg-Zn-RE系LPSO相の構造もL12型原子クラスターの面内規則配列に不規則性が導入されたものとして記述され,L12型原子クラスター及びその配列の安定性を第1原理計算により比較解明する段階にまで研究が進展している.(1)濃縮原子層の積層周期に関しても,L12型原子クラスター及びその配列の安定性、密度との相関が次第に明らかにされつつあり,Mg-Zn-RE系LPSO相のZn, RE低濃度側で観察される相変態(18R→14H)との関連が明らかにされつつある.
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今後の研究の推進方策 |
Mg-Al-RE系LPSO相は面内で長範囲の規則配列構造を取る規則-不規則(O-D: Order-Disorder)構造として,また,Mg-Zn-RE系LPSO相は積層方向への化学的秩序の相関長が、対応する積層秩序に常に同期したシンクロ型LPSO構造として記述できることを明らかにしたため,このような構造の相違を支配する因子の解明を推進している.具体的には,Mg-Al-RE系およびMg-Zn-RE系LPSO相におけるL12型原子クラスターの安定性,L12型原子クラスター間の配列や密度の安定性などをSTEMによる原子直視観察,3次元アトムプローブ法,陽電子消滅ドップラー広がり法と第1原理計算をカップルさせながら研究を推進する予定である.特筆すべき研究計画の変更や研究遂行上の問題点はない.
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備考 |
http://imc.mtl.kyoto-u.ac.jp/
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